2006 Fiscal Year Annual Research Report
北海道における森林依存性小コウモ類の保全生物学的研究
Project/Area Number |
04J08885
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
河合 久仁子 北海道大学, 低温科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 森林依存型小コウモリ類 / 希少種 / Mytois ikonnikovi / Myotis gracilis / ミトコンドリアDNA / テレメトリー調査 / GIS解析 / 分布 |
Research Abstract |
本研究では森林依存型小コウモリ類の中でも捕獲してもその外部形態では種判別が困難な「Mytois ikonnikoviヒメホオヒゲコウモリ」と「Myotis mystacinusホオヒゲコウモリ」を具体的な対象種とした.希少種であるこれらの種は,捕獲申請一つにつき2頭までしか捕殺が許可されてこなかったために,道内における正確な分布域がわかっていなかった.希少種であるにもかかわらず,基礎的な調査がなされていなかった.本研究では,捕獲地点の情報を多く集め,道内の正確な分布状状況について明らかにし,ねぐら等の環境選択性など基本的な生態情報を調査することを目的とした. 本研究では,以下の5課題について,新しい知見を得た. 1・道内での翼手類の捕獲情報の蓄積をおこなうために,道内のコウモリ研究者9名に呼びかけて,データベースを構築した(公開準備中).対象種であるヒメホオヒゲコウモリおよびホオヒゲコウモリについては,合計428個体のデータを蓄積し,捕獲地点としては168箇所のデータを得ることが出来た.ホオヒゲコウモリはヒメホオヒゲコウモリよりも分布域が狭く,また個体数が少ないことが示唆された. 2・北海道内でヒメホオヒゲコウモリおよびホオヒゲコウモリ2種の野外での識別点について,捕獲個体から皮膜採集をおこないDNA(ミトコンドリアDNACytb)を用いた種識別とあわせて検討し,その有用性を明確にした. 3・ねぐらと捕獲地点との距離的関係を知るために,テレメトリー調査をおこなった(ヒメホオヒゲ5個体,ホオヒゲ1個体).これにより,捕獲地点とねぐらの距離は最長1.2キロメートル,最短で110メートルであることが明らかとなった. 4・捕獲された種の識別が正確になされた捕獲地点のまわり半径2キロメートル以内にねぐら環境があると仮定し,GIS(地理情報システム)を用いた,環境変量の抽出をおこなった.また,その変量に基づいて,GLMでモデルを構築した.AICによって,モデル選択を行い,二種間の捕獲地点周辺の環境選択性を評価した.選択されたモデルより,ヒメホオヒゲコウモリよりもホオヒゲコウモリの方がよりねぐら環境を選択している可能性が示唆された. 5・捕獲個体のDNA配列情報(ミトコンドリアDNACytb部分配列)から,両種には遺伝的構造が異なることが示唆された.加えて,ホオヒゲコウモリは比較的高い遺伝的多様性を保っているのに対し,ヒメホオヒゲコウモリは遺伝的な多様度が低いことが明らかとなった.
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Research Products
(2 results)