2006 Fiscal Year Annual Research Report
シロイヌナズナにおける植物RNAウイルスの宿主決定機構の解明
Project/Area Number |
04J08920
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Research Fellow |
藤崎 恒喜 独立行政法人農業生物資源研究所, 植物科学研究領域植物・微生物間相互作用研究ユニット, 特別研究員(PD)
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Keywords | 植物RNAウイルス / 宿主因子 / RNA binding protein / Tomato mosaic virus / シロイヌナズナ / BTR1 |
Research Abstract |
本研究ではシロイヌナズナにおける植物RNAウイルスの宿主特異性決定機構の解析として、シロイヌナズナにおけるウイルス増殖効率を決定するウイルス-植物問相互作用の解析を行っている。これまで、シロイヌナズナcpr5変異体でのブロムモザイクウイルス(BMV)増殖の昂進現象の作用機作を明らかにするためシロイヌナズナ細胞抽出液からの試験管内BMV複製系の構築を試みたが、現在のところ、いくつかの細胞で条件を検討した限りでは、効率のよいBMV複製を検出できる系を構築するには至っていない。一方で、研究の一環として、別の植物RNAウイルスであるトマトモザイクウイルス(TcoMV)のゲノムRNAの5'あるいは3'末端領域と共精製されるシロイヌナズナのタンパク質を昨年度までにいくつか同定してきた。本年度ではそれらのToMV増殖への関与を調査した。そのうちToMV RNAの5'末端領域を用いて精製した機能未知のRNA結合タンパク質遺伝子をシロイヌナズナにおいてノックアウトすると、ToMV増殖が昂進することが分かり、これを、BTR1(Binding to ToMV RNA1)と名づけた。シロイヌナズナにおいて、BTR1遺伝子を過剰発現するとToMV増殖が抑制され、また、そのような影響はキュウリモザイクウイルス増殖に対しては認められなかった。さらにBTR1のRNA結合特性をゲルシフト法により調べたところ、BTR1はToMV RNA5'末端領域内の複製タンパク質遺伝子の開始コドン周辺領域に特異的に結合することが分かった。以上の結果から、BTR1はToMV RNAの5'末端領域に結合し、ToMV増殖を特異的に抑制する働きがあると考えられる。このようなトバモウイルスの増殖制御機構はこれまで報告がなく、植物内でのウイルス増殖効率を決定する新規の機構であることが期待される。
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Research Products
(1 results)