2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J09019
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
谷口 博基 北海道大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ペロブスカイト / 量子常誘電性 / 相転移 / 同位体効果 / ラマン散乱 / 量子揺らぎ |
Research Abstract |
量子常誘電体SrTiO_3は極低温領域において、量子揺らぎが強誘電性の秩序化を抑制するという量子常誘電性を示す。また、このSrTiO_3は酸素同位体置換によって強誘電性を示すようになる。この現象はこれまで熱揺らぎの範疇で議論されてきた強誘電体において、量子揺らぎの効果が顕著に観測され、且つそれが同位体置換によって制御されるという非常に新奇な現象であり、そのメカニズムの解明は急務である。 本研究では、熱揺らぎを極限まで抑制して量子揺らぎの効果を直接的に観測する為に、液体ヘリウム冷却型の光学クライオスタットを特別に設計・製作して1K以下の極低温領域における光散乱測定を実現した。また、高品質のSrTiO_3単結晶を購入し、それを酸素同位体置換して同位体置換試料を製作した。これらを用いて極低温領域における量子常誘電体SrTiO_3のラマン散乱スペクトルの温度変化と、その同位体置換率依存性を調べた。その結果、極低温領域の量子常誘電体中で生じた局所的に対称性の低下した領域(LSBR)が、同位体置換によって顕著に発達することを明らかにした。これは、LSBRの成長をプローブとして同位体置換による量子揺らぎの抑制を観測した新たな結果である。また、同位体置換によるLSBRの成長によって、通常ラマン散乱では観測できないソフトモードが極低温領域で明瞭に観測されるようになることが明らかになった。それを用いて、ソフトモードのダイナミクスにおける同位体置換効果を調べた結果、同位体置換による質量効果によってソフトEuモードの振動数が低下し、モードの振動が不安定になっていくことが明らかになった。これによって、SrTiO_3における同位体誘起強誘電相転移が、強誘電性ソフトEuモードのソフト化によって生じる変位型の強誘電性相転移であることを明らかにした。 これらの研究成果を、第59回日本物理学会秋季大会(青森)、2005 Workshop on Fundamental Physics of Ferroelectrics (Virginia, USA)において口頭発表し、第5回日韓強誘電体会議(Seoul, Korea)においてポスター発表した。また、Journal of Physical Society of Japan及びJournal of the Korean Physical Societyにおいて公表した。
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Research Products
(2 results)