2004 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ・マイクロ微粒子およびカーボンナノチューブに対する生体反応とその応用
Project/Area Number |
04J09173
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田村 一央 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ナノ・マイクロ微粒子 / チタン摩耗粉 / カーボンナノチューブ / バイオマテリアル / ナノトキシコロジー |
Research Abstract |
チタンは生体親和性に優れた材料として医療分野に広く応用されているが、摩耗粉になると組織障害を起こす。微細浮遊粒子の被爆と死亡率との間には疫学的に正の相関があることも指摘されている。現在精力的に行われているナノテクノロジーの研究開発については、そのプラス面ばかりが強調されているが、ナノ・マイクロ微粒子の健康に及ぼす影響も検討する必要がある。本研究では、材料がナノ・マイクロ微粒子化したときの材質・粒子サイズ・形状の違いによる組織為害作用を病理学的・生化学的に検索した。試料として金属、セラミックス、ポリマー、カーボンナノチューブの各微粒子を用いた。それぞれの塊状粒子を50nmから150μmまでの各種サイズに調整した。また、二酸化チタンは球状粒子と針状粒子も試料として用いた。これらの粒子と生細胞を混和し、生存率・増殖率・サイトカイン量・活性酸素量を測定した。またラット皮下埋入試験を行い、組織変化を観察した。 (1)チタン粒子のサイズ依存性 マクロファージは3μm以下で50nmまでの粒子に対し、サイトカイン・活性酸素の産生量は有意に高かった。一方、10μm以上の微粒子に対しては細胞の反応は低下した。動物埋入試験において50μm以上のチタン粒子では炎症反応も穏やかで、長期的には線維性結合組織で覆われ安定した。一方、3μm-500nmの粒子では強い炎症反応が生じ、長期間反応が持続した。 (2)材質依存性 ニッケル微粒子は溶出イオンによる細胞膜障害作用が強く、細胞生存率は有意に減少した。しかし鉄のイオン溶出量はニッケルより大きいにもかかわらず、溶出が無視できるチタン粒子とほぼ同等なサイズ依存性を示した。生体内不活性の二酸化チタンや生体吸収性の乳酸もチタン粒子と同様の傾向を示した。 (3)形状依存性とサイズ依存性 二酸化チタンの針状粒子は同サイズの球状粒子に比べると為害性が強く、LDHの漏出量は有意に高かった。針状粒子に対するTNF-α産生量はサイズ依存性が顕著で、粒子サイズが小さいほど有意に高い値を示した。一方、針状粒子に対するIL-1β産生量はサイズによらず、球状粒子に比べ有意に高い値を示した。 以上より、一般に材料の組織為害作用は細胞障害を引き起こすイオン溶出による化学的効果が大きい。しかし、マイクロ・ナノ微粒子になるとサイズや形状といった物理的特性による影響が大きくなることが明らかになった。
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Research Products
(5 results)