2004 Fiscal Year Annual Research Report
官能性ホスフィンの分子設計を基軸とする反応場開発と触媒反応への応用
Project/Area Number |
04J09222
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
落田 温子 北海道大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ホスフィン / 均一系触媒反応 / バスカ錯体 / C-H結合活性化 / ニッケル-ホスフィン錯体 / 電子効果 |
Research Abstract |
これまでの研究により合成法を確立したカゴ型単座トリアルキルホスフィン配位子SMAPの応用研究を行った。まず、電子効果の異なるSMAP配位子からなるホスフィン配位子ライブラリーを構築し、均一系触媒反応へと適用した。一つ目の応用としてVaska型ロジウム錯体tranS-RhCl(CO)(SMAP)_2による不活性C-H結合の活性化を検討し、触媒的な炭化水素官能基化におけるSMAP配位子の活性を明らかにした。そもそもこの触媒反応では配位子自身のC-H結合活性化を避けるため、適用可能な配位子はコンパクトなトリアルキルホスフィンに限られており、配位子の電子効果をコントロールすることは不可能であった。そこで本研究で開発した立体効果を変えずに電子効果を変化させることができるSMAPを適用したところ、これまで最高の活性を示すと言われているトリメチルホスフィン錯体よりも高い活性を示した。二つ目の応用としてニッケル-SMAP錯体触媒によるアルキンのカルボシアノ化反応を検討し、SMAPがこの触媒反応の配位子として有効であることを明らかにするとともに興味深いことを見いだした。一般にコンパクトなトリアルキルホスフィンは低沸点の液体で揮発性が非常に高く、特に高温条件下では錯体を不安定化する可能性がある。これに対し、SMAP配位子はコンパクトなホスフィンでありながら、非常に結晶性が良く空気酸化に対しても安定で大変取り扱いやすい。構造的特徴に由来するこの性質のため、SMAPは高温条件下においても錯体を安定化できると考えられる。一方SMAPの骨格に不斉要素を組み込んだ不斉トリアルキルホスフィン配位子の合成法についても検討した。これについては来年度も継続して行う。
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