2004 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫幼虫における外皮形態形成の分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
04J09245
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Research Institution | Hokkaido University |
Research Fellow |
二宮 陽介 北海道大学, 地球環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ドーパ脱炭酸酵素 / チロシン水酸化酵素 / 真皮細胞 / 尿酸 / Differential Display |
Research Abstract |
これまで本研究では、DDC(ドーパ脱炭酸酵素)にのみ注目し研究を進めてきた。しかしメラニンは、数多くの酵素による、とても複雑な合成経路を有している。このメラニン合成経路における、DDCの重要性を確認する為、メラニン合成経路においてDDCよりも上流に位置するTH(チロシン水酸化酵素)について研究を行った。ヒト・ショウジョウバエTHの相同配列部分から縮重プライマーを設計し、RT-PCR方を用いて、鱗翅目昆虫において初めてTHのクローニングに成功した。THはDDCと同じように、皮膚で発現し、脱皮期に発現量が上昇することを確認した。しかし脱皮期におけるTH活性は、ほとんど変化していなかった。このことから、THはDDCほど黒色縞模様形成に積極的に関与していないと考えられる。しかしTHは、新しいマーカー遺伝子として使用できる可能性がある。これからは、DDC・THを用いて、GBPによる、DDC発現上昇のメカニズムを解明していく。 黒色・白色縞模様直下の真皮細胞は、細胞増殖の面で異なっていることは、これまでの研究で明らかになっている。このことから、形態的な差異が真皮細胞に存在するのではないかと考え、電子顕微鏡を用いた、皮膚の形態観察を行った。その結果、白色縞模様直下の真皮細胞にのみ、多数の尿酸小胞が存在していた。これは同じ鱗翅目昆虫カイコガ幼虫の真皮細胞に存在し、光を反射することで皮膚を白く見せている。このように全く異なった性質を持つ真皮細胞が、隣り合わせで存在し、皮膚の模様を決定しているのである。この位置関係を決定する遺伝子を網羅的に解析する為、Differential Display法を用いた。まだ解析の途中ではあるが、黒色・白色縞模様において発現量の異なる遺伝子を、3クローン得ることに成功した。この3クローンについては、さらに解析を進めていく方針である。またこの方法を用いて、さらなる候補遺伝子の探索を行っていく。
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