2004 Fiscal Year Annual Research Report
日本絵画における風景表現の諸機能と社会的役割に関する研究
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04J09290
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Research Fellow |
近藤 僚子 (水野 僚子) 国立歴史民俗博物館, 研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 日本美術 / 日本絵画 / 風景 / 表象 / 聖地 / 神社 / 寺院 / 信仰 |
Research Abstract |
初年度となる本年度は、風景表現のある絵画や絵図等の現存遺品のリストアップと資料写真および文献の収集を行い、それに基づくデータベース(DB)の作成に着手した。中世〜近世の絵画作品(宮曼茶羅・社寺縁起絵・祖師絵伝・物語絵・経意絵・仏伝図・六道絵等)を対象とし、風景を描いた絵画・絵図の現存遺品を形態・素材・彩色・制作時代・描写対象(場所)・縁起釣モチーフの有無・文献等に分類したDBを作成した。また表象レベルによる検討も行い、「図像」というレベルにおいて、樹木・動物・川・山・岩・人間・雲等の図像データを抽出したDB作成し、さらに抽出したモチーフに関連して文献資料の検討も行い、「文字」による表象として、神話・社寺縁起・紀行文・日記・和歌・経典等から該当部分を抜き出し、データ化を行った。今後の課題は、個別の調査による詳細な検討を行い各データを充実させることである。 調査では、琴弾宮縁起絵(観音寺)、八幡縁起絵(石清水八幡宮)、石清水八幡宮古図(同)、石清水八幡遷座縁起絵(徳川美術館)、粉河寺縁起絵巻(粉河寺)、熊野権現縁起(和歌山市博物館ほか)および数点の六道十王図等の絵画の調査を行い細部表現や技法の検討を行った。併せて熊野・男山・琴弾山周辺・粉河等の地形および景観に関する実地調査も行い、描写内容との異同の検討を行った。DB作成途中であるため全体像は把握できていないものの、神社や寺院を描いた絵画には定型図像がみられること、それは描かれた場所や空間、作品形態や時代を越えて継承されていることが確認できた。これらの図像は、物語性を帯び口承や文字により伝播したと考えられるものがある一方、「形」としての視覚的イメージが重要視され継承されたものもみられることが分かった。八幡信仰に基づく絵画および絵図の調査が実施できたこと、特に石清水八幡宮では文書の調査が実施できたことは、本年度の大きな成果となった。
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