2005 Fiscal Year Annual Research Report
生体分子の金属活性中心の電子状態と機能および反応制御に関する理論的研究
Project/Area Number |
04J09570
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鷹野 優 大阪大学, 蛋白質研究所, 助手
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Keywords | シトクロムc酸化酵素 / 密度汎関数法 / ケト-エノール互変 / プロトン輸送 / プロトンワイヤモデル / ペプチド結合 |
Research Abstract |
本年度は、研究計画に基づいて昨年度のリパーゼに対する分子軌道法、分子動力学法から得られた理論計算の精度に関する知見を基にして、シトクロムc酸化酵素の複核金属活性中心の電子状態変化とプロトン輸送発現との関係の理論的な解明に着手した。 シトクロムc酸化酵素は、呼吸における電子伝達系でプロトン輸送を行う。しかしプロトン輸送経路および機構は未だ明らかにされていない。近年、月原らは高分解能のX線結晶構造解析から新しいプロトン輸送経路を示唆した。その経路にはペプチド結合を介したプロトン移動が関わり、プロトン輸送の方向を決めていると提唱している。本研究では密度汎関数法によってこの経路の可能性を検証した。 プロトン移動が関わるペプチド結合(Tyr440-Ser441)、プロトンの供与体(H_3O^+)、受容体(Asp51)からなるモデルに対して密度汎関数法(B3LYP/6-31+G(d))を適用した。得られたプロトン移動の経路は、ペプチド結合を介したプロトンのカルボン酸への移動とケト-エノール互変からなる。理論計算から、提唱されている輸送経路でのペプチド結合を介したプロトン移動はケト-エノール互変が律速段階であることがわかった。またその反応機構は直接エノールにあるプロトンがアミド窒素に移るのではなく、水分子と隣接するペプチドのアミド基とでプロトンの受け渡しを行う、プロトンワイヤモデルで説明できることを明らかにした。 これらの結果に関しては、日本化学会第86回春期年会などの国内・国際会議において発表を行っている。
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