2005 Fiscal Year Annual Research Report
魚類における体側模様の左右非対称性とその社会的機能に関する研究
Project/Area Number |
04J09581
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
鹿野 雄一 三重大学, 生物資源学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | イワメ / アマゴ / ヤマメ / 体側模様 / パーマーク / 希少淡水魚の保全 / 遺伝的かく乱 / 養殖魚の放流 |
Research Abstract |
特殊な体側模様を持つサケ科魚類「イワメ」について、主に以下の3点についてその生態を明らかにした。イワメの体側にはサケ科特有のパーマークや黒点がなく、その生態を明らかにすることは、魚類の体側模様の進化を解明する上でも重要であると考えられる。 イワメは1961年に新種Oncorhynchus iwameとして記載されたが、アマゴ(Oncorhynchus masou ishikawae)やヤマメ(Oncorhynchus masou masou)の変異型ではないかと疑念視されていた。そこで、イワメとアマゴが同所的に生息する三重県三国谷において、その繁殖生態を調査した。その結果、イワメとアマゴ間には生殖前隔離がなく、任意に交配していることが明らかになった。このことからイワメとアマゴは同種である考えられる。ヤマメ域に生息するイワメについても、ヤマメの変異型であると考えられる。 さらに三重県三国谷においてイワメとアマゴの生態を調査し、その特性を比較した。その結果、成長、サイズ、食性、性比、適応度などの基本的な生態特性について、二者に有意な差は認められなかった。つまりイワメとアマゴ間には、体側模様以外に本質的な差異はないものと考えられる。このことから、パーマークや黒点などの体側模様は中立的な進化であり、従来から指摘されているような隠蔽の効果やナワバリ維持の効果は、ほとんどないものと思われる。 イワメは過去に日本の7ヶ所の生息地から報告されているが、近年になってその絶滅が危惧されている。一方で、各地のイワメについてこれまでに詳細に調査されたことはなかった。そこで各地のイワメについて生息状況を調査した結果、2ヶ所の生息地で既に絶滅した可能性が高いことが判明した。これらの生息地では、養殖されたアマゴの放流が行われており、交雑による遺伝的影響を受けたものと考えられる。
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