2005 Fiscal Year Annual Research Report
市場支配的事業者による取引拒絶行為に対する経済法的規制の在り方
Project/Area Number |
04J09615
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Research Fellow |
川原 勝美 一橋大学, 大学院・法学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 不可欠施設 / エッセンシャル・ファシリティ / 独占禁止法 / 自由化 / アクセス |
Research Abstract |
「不可欠施設の法理」とは、事業活動を行う上で必要不可欠な施設を独占的に保有する事業者は、競争事業者に対して、合理的な取引条件に基づいて、当該施設を利用させなければならないとする規制法理である。同法理は、米国反トラスト法において初めて提唱され、近年は、EC法及びドイツ法において継受・発展してきており、我が国においてもその導入の当否が議論されている状況にある。こうした状況を踏まえて、17年度の研究においては、同法理が、独占禁止法における従来の規制原理との関係でどのような意義を有しているかという問題に焦点を当てて検討を加えた。その研究成果として、論文「不可欠施設の法理の独占禁止法上の意義について」(『一橋法学』第4号・第2号・333頁以下)を発表した。本論文の概要は以下の通りである。まず、米国法については、同法理が従来の「意図のテスト」や「独占のテコ理論」という規制法理に対してどのような意義を有しているかに焦点を当てて、学説・判例の検討を行った。米国における同法理の意義は、主観的意図の立証を簡略化し、また、具体的な競争制限効果の立証を緩和する点にあったことが明らかとなった。次いで、EC法及びドイツ法においては、公益事業の自由化を推進する過程で、既存の独占的事業者の保有する施設(送電線・地域回線など)を新規参入者に開放することによって競争を確立するとの必要性に基づいて、同法理の継受が試みられたことが明らかとなった。また、従来の規制法理との関係については、EC法・ドイツ法の場合には、不可欠施設の法理を導入しなくとも既存の規制法理で十分に対応できたとの見解と、差別的取扱いの禁止を従来よりも強化する上で同法理は独自の意義・役割を担っていたとする見解が対立していることが明らかとなった。
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Research Products
(1 results)