2004 Fiscal Year Annual Research Report
廃棄物処理・リサイクル制度の経済学的総合研究:契約論的モデル分析と実証的研究
Project/Area Number |
04J09646
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
阿部 新 一橋大学, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 廃棄物 / 不法投棄 / 処理委託 / 排出者責任 / 拡大生産者責任 |
Research Abstract |
本研究は、廃棄物処理が排出者から下請の処理業者に委託される状況を考慮し、その適正処理を実現するために、排出者、処理業者、さらにその他を含めた関係主体の役割、責任をいかに考えるべきかについて、理論および実証の両側面から検討するものである。これには、日本とドイツの制度の比較を念頭に置いている。理論研究としては、まず、排出者、処理業者ともに民間主体であることを考慮し、市場において、排出者が廃棄物の処理委託をする状況を数理的にモデル化した。廃棄物処理においては、安価な方向に委託がなされるため、排出者に処理責任を課すのだが、これには免責事項を残す日本と厳格責任を課すドイツの制度の効果の違い、比較を考慮に入れた。この結果、ドイツ型の排出者責任の下であれば、民間主体のみで廃棄物の適正処理が実現しうることが示された。次に、民間部門の処理業者だけでなく、適正処理をする公的部門の処理業者が存在する場合に、どのようにして、両部門の区分をすべきかについて、廃棄物の適正処理の観点から、分析を行った。これは、同じ排出源の廃棄物が公的部門によって処理されているドイツと、民間部門によって処理されている日本との比較を念頭に置いている。この結果、廃棄物の有害性が公民を区分する要素であることが含意として示されている。さらに、生産者に処理責任を課した場合の適正処理の効果に関して、分別回収段階で委託がなされるドイツ(あるいはEU)と、処分段階で委託がなされる日本の制度の理論的な比較分析も行なった。ここでの含意は、ドイツ型では分別回収段階で不適正処理の可能性があり、生産者の監督の程度が重要となってくる反面、日本型ではドイツ型における懸念はないものの、回収品目によっては不適正処理の懸念があるということが示された。
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