2004 Fiscal Year Annual Research Report
国際援助、とくに食料援助が被援助国および援助国の農業経済に及ぼす効果の測定
Project/Area Number |
04J09757
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 太郎 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 国際援助 / 食料援助 / 生産調整 |
Research Abstract |
本プロジェクトは食料援助に主眼を置いてはいるが、国際援助全体の経済学的意味に接近することなしに、食料援助が援助国および被援助国におよぼす影響を知ることはできない。そこでプロジェクト1年目の今年度は、当初の予定通り国際援助の経済的効果を理論的に体系立てる作業に重点を置き、以下の事象を明らかにした。まず、既存の経済成長理論に国際援助を組み込んだ際の被援助国の成長過程の変化を数学的に説明し、統計学的に検定することによって、(1)新古典派の仮定、すなわち収穫逓減の法則の採用なしには国際援助が被援助国の長期的な経済成長を支えることはあり得ないこと、(2)ただし、その仮定の採用は現実世界と大きく乖離はしていないこと、(3)しかしながら、被援助国ごとに異なる感応的な経済部門への国際援助以外は、ほとんど成長効果を生み出さないこと、を明らかにした。加えて、各援助国の国際援助における貢献度を各被援助国の経済成長の到達度を基に測る新しい指数の設計を通じて、(1)複数の基準を融合した上で各援助国の貢献度をスカラーで表す既存の評価方法は、多くの場合において指数の価値を最大化していないこと、(2)各被援助国への予算の配分状況を用いて援助国の貢献度を求める別の評価方法も、援助国の経済成長への貢献を測定するには統計的な歪みがあること、(3)効率的な援助予算の配分と公平な援助予算の配分は同時に達成しうる目標であり、必ずしも逆相関関係にはないこと、を示した。 その上で、2年目以降の食料援助研究のための足がかりとして、各先進国の食料援助政策に関わる文献収集を行った。また同時に、中国雲南省の貧困地帯と大分県の稲作地帯において、食料援助が被援助国、援助国それぞれの農業経済におよぼす影響を調べるための予備的な実地調査を実施し、プロジェクト2年目以降に食料援助に焦点を絞った理論研究を進めるための、知識的な土台を準備した。
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