2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J09773
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 典史 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 分子クラスター / 構造転移過程 / 二成分系 / 混合・偏析 / 集団運動 / 遷移状態理論 |
Research Abstract |
クラスターの構造転移について、状態間の反応経路に注目した解析方法を提案・検証した。二成分クラスターで観測される混合・偏析について、緩和過程における系の状態変化が、表面拡散モードと垂直拡散モードという、異なる特徴を持つ集団運動によって特徴付けられることを明らかにした。 クラスターの構造転移は、多数の局所安定点が埋め込まれた多次元エネルギー超曲面上を経巡る反応過程とみなせる。ある局所安定点から出発した系の時間発展は、ベイスン(安定点近傍の部分空間)内の局所振動運動と、間欠的に起こるベイスン間の遷移で特徴付けることができる。系が自由エネルギーを最小とする状態に向かって緩和する傾向を持つことは明らかであるが、終状態に至るまでに経巡る実際の経路や経路に沿った反応速度については一般的には明らかではない。本研究では、分子動力学計算で得られる時系列からベイスン間遷移に対応する反応経路の情報を抽出することで、反応過程を特徴付ける反応機構について、元々の時系列データを調べる場合とは異なる新たな側面から解析する方法について提案した。更に、実験・理論の先行研究が豊富な希ガス混合系に注目し、対応する有効近似モデルである二成分レナード・ジョーンズ・クラスターを検証対象としてベイスン間遷移ダイナミクスの反応経路について解析を行った。二成分クラスターの緩和過程について解析した結果、混合・偏析に伴う系の時間発展は、表面原子を主成分とする集団運動(表面拡散モード)と、クラスター内部の原子を主成分とする集団運動(垂直拡散モード)の2種類の集団運動で特徴付けられることを明らかにした。このように、クラスターの構造転移では、一般的に、時間スケールの異なる2つの集団モード(表面拡散モードと垂直拡散モード)をそれぞれ繰り返すことで、系の状態は間欠的に終状態に向かい緩和することが明らかとなった。
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Research Products
(2 results)