2005 Fiscal Year Annual Research Report
フランス植民地アルジェリアにおける入植者社会の形成と地中海移民ネットワーク
Project/Area Number |
04J09803
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
工藤 晶人 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 近代史 / 植民地 / 移民 / フランス:アルジェリア / 地中海 / イスラム |
Research Abstract |
昨年度に引きつづき英国オクスフォード大学セント・アントニーズ・コレッジにおいて在外研究をおこない、同国の図書館・史料館に所属された文書・出版物の研究をすすめた。また、これまでに収集した史料の考察とあわせて以下の知見を得た。 1.19世紀アルジェリア西部の植民地都市を事例として、地域社会の形成過程と移住の形態について研究を継続し、人口統計や選挙人名簿、出生記録等の史料をもちいて、スペイン系移民を中心とするヨーロッパ系移住者とフランス系移住者との差異についてデータの蓄積をすすめた。また、県当局内の報告書類を検討し、19世紀末の行政当局が、先住民社会の動向だけでなくヨーロッパ系移民の増加を警戒し監視する施策をとっていたことを明らかにした。 2.入植地建設と不可分の関係にある土地収用政策については、これまで、その強制的・抑圧的性格が強調されてきた。その一方で一連の政策・行政手続きがどのように正当化され、合理化されてきたかという側面は十分に研究されていない。そこで当時の法学書に見られる学説の展開や行政文書を研究した結果、フランス型の制度の強制と並行して、新しい制度と先住民社会の伝統との理論上の整合性を確保しようとする試みが継続して存在していたことが明らかになった。そうした試みが実際の運用においてどのような影響をもたらしたのかを検討することが今後の課題となる。 以上の研究成果の一部は、フランス社会科学高等研究部とフランス・ローマ学院共催の研究集会「古代〜近代の地中海世界における土地の権利、占有形態、利用の紛争」(パリ、2005年5月27日)において、個別論題「植民地状況下の土地管理と係争:十九世紀アルジェリア西部の事例」として報告され、本研究の内容が長期的・広域的な比較史研究に貢献する可能性が確認された。
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