2004 Fiscal Year Annual Research Report
北太平洋沿岸地域における海獣狩猟文化の考古学的研究
Project/Area Number |
04J09810
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 健 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 海獣狩猟 / 銛頭 / 骨角器 / 続縄文文化・弥生文化 / オホーツク文化 / アムール下流域 |
Research Abstract |
本研究では標記の目的のために、海獣狩猟の特徴的な道具とされる銛頭を対象として、型式学と層位学に基づいた編年研究を行った。海獣狩猟文化が高度に発達した北米アラスカ地方の考古学においては銛頭が文化編年の主要な指標とされてきたが、近年遺物に対する直接的な放射性炭素年代測定が進められ、従来の型式学的編年に疑問符が突きつけられている。しかし、これらの成果は型式学的研究の有効性をただちに否定するものではなく、むしろ研究の射程を見極め方法論を洗練させることこそが重要である。弥生文化と続縄文文化の交流は日本列島の銛頭研究において最近注目されているテーマであるが、該期の各地域における編年の構築と対比を行った結果、いわゆる「索孔の方向転換」現象のプロセスは多様であり、特定の中心地からの強力な、もしくは玉突き状の伝播によるものとは考えにくいことが明らかになった。 北海道モヨロ貝塚においては竪穴住居の覆土に堆積した魚骨層が検出され、銛頭や釣針などの狩猟漁撈具を含む多数の遺物が出土した。発掘調査、整理・分析作業ともに途上であるが、オホーツク文化の海獣狩猟技術の変遷や地域性などに関連する多くの成果が期待される。日本列島北部、特に北海道における海獣狩猟文化の研究においては、北回りの交流、すなわちサハリンを通じた大陸との関係を無視することはできないが、ロシア共和国ハバロフスク州ゴールィムィス1遺跡および関連資料の調査により、アムール下流域における新石器時代から初期鉄器時代にかけての文化変遷をある程度明らかにすることができた。このほか、遺物論と技術・行動論を架橋するミドルレンジセオリーの構築を志向して、礼文島における現代の海獣狩猟に関する民族考古学的調査と銛頭の製作・使用に関する予備的な実験を行った。
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