2004 Fiscal Year Annual Research Report
1949年前後の中国メディア界の再編-自由主義から社会主義への移行-
Project/Area Number |
04J09829
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 元哉 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中国 / 人民共和国 / メディア / 著作権 |
Research Abstract |
本年度は、人民共和国連国前後の中国共産党によるメディア政策の推移を概観し、1940年代から50年代にかけての中国メディア界の再編過程を実証的に分析した。この分析から、第二次世界大戦後の中国メディア界は、国民党による言論弾圧があったにもかかわらず、世界的な自由主義潮流を背景に、これまで想像されてきた以上に活発な活動を展開していたこと、そして、それらの情報流通網が人民共和国建国初期の国家統合に効率的に利用されていたことが分かった。もちろん、1940年代後半の自由主義的メディア体制は、社会主義国家建設にむけて段階的に整理され、1950年代後半にはすべて国営メディアへと再編される。 こうした再編過程には、国際情勢の変化も見逃せない。戦後国民政府は五大国の一員として国連を舞台とする報道自由運動の理念に理解を示していたが、米ソ冷戦による国連政治の形骸化と中国共産党の政権樹立により、ソ連のメディア政策が1950年代中国のメディア再編に大きな影響を及ぼすことになった。1950年代半ば、報道界の中ソ交流は活発化し、『プラウダ』の編集方針が中国に移植されると同時に、同紙を頂点とするメディア統制政策が中国において模倣された。 以上のように、1949年前後のメディア界の実態が徐々に明らかとなってきたが、自由主義から社会主義へと移行したこの時期に「言論の自由」に対する意識がどのような質的変化をとげたのか(あるいは、とげなかったのか)--つまり自由権をはじめとする権利意識が1949年前後にどのように継承されたのか、という点も解明しなければならなくなった。そこで、本年度は「言論の自由」にかかわる権利意識として著作権に注目し、その制度化と社会での受けとめられ方について民国期を中心に考察した。
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