2004 Fiscal Year Annual Research Report
メディア研究による19世紀ロシア文学の大衆化過程の解明
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04J09891
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
神長 斉子 (大野 斉子) 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ゴーゴリ研究 / 出版史 / イラストレーション / メディア研究 / ロシア教育史 / 文化研究 / 受容史 / 文学の大衆化 |
Research Abstract |
論文「1860年代以後におけるゴーゴリ作品の受容の変遷」 1860年代をゴーゴリ作品の受容史における転換期と見て、転換の要因と推移を分析した。 まず転換の要因として1860年代における教育改革を挙げ、改革の中でロシア文学に求められた教育的機能について分析した。この中でゴーゴリ作品がロシアの国民を育成するための教育プログラムとして新たな意味づけを獲得したことを論じた。 次に、1870年代以後のゴーゴリ作品の出版傾向を分析した。1870年代に設立された中小出版社の動向の分析を通じて、啓蒙や教育目的の出版が増加し、文学が国民的な財産として階級降下する傾向が強まったことを考察した。同時に作品をもとにしたイラストの流通や全集の発行が相次いだ。雑誌『ニーヴァ』やイラスト集、全集等の出版物の分析を通じてゴーゴリ作品そのものがロシア文化の記号として定着し、国民的財産という意味づけが先行した受容の仕方が広まったことを考察した。 こうした分析を通じて1860年代の転換期に生じた意味づけを持ち込みながらも、啓蒙という大きな傾向として次第に形を変えながら、継続していくプロセスのケーススタディを行った。 以上の研究は19世紀におけるゴーゴリ作品の大衆化を、メディア研究の側面から考察する研究の一環として行った。研究にあたってはロシアのペテルブルグ国立図書館、北海道大学スラブ研究センターにて収集した資料および科研費により購入した書籍等を用いた。
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Research Products
(1 results)