2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J09938
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山上 紀子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | オディロン・ルドン / フランス絵画 / 肖像画 / 19世紀 / 20世紀初頭 / 装飾 / コレクター / 芸術と社会 |
Research Abstract |
フランス人画家オディロン・ルドンの芸術に関する研究を継続している。 平成17年度には、フランス美術史研究所、フランス国立図書館、フランス国立美術館図書・資料室を中心に調査を行った。調査の結果、これまで所在が不明であったロワベ作《ワルトネーの肖像》の複製を発見し、関連の美術批評や同時代出版物を確認することができた。現在、その成果を「(仮題)ルドンと肖像画-ロワベ、マネ、ハルス、レンブラント解釈を手がかりに-」にまとめている。この論考の目的は第一に、ロワベ作《ワルトネーの肖像》をルドンが厳しく批判したことの意味を明らかにすることである。ルドンは、ロワベ批判を通して、フランツ・ハルス的な手法を特徴とする同時代のレアリスム絵画、とくにマネやドガの肖像画を痛烈に批判している。第二に、ルドンにとってハルスの芸術は何を意味したのかを明らかにすることである。ルドンはハルスを絵画専一の画家と位置づけ、比較することによって、レンブラントの豊かな精神性を強調した。ルドンがそのオランダ絵画論において二人を比較したのは、同時代のトレ=ビュルガーとフロマンタンから影響を受けたものと考えられる。第三に、ルドンの生涯を通じて100点以上も描かれた肖像画のなかで、1900年頃に現れた変化の意味を明らかにすることである。変化とは、画面の中央に人物のみを単彩で描いていたのをやめ、花を中央に、人物を端に置くという反伝統的な構図を取り入れるとともに、色鮮やかな花を画面全体に浮遊させるようになったことである。同様の構図とモチーフを用いたドガやマネとは異なり、ルドンは描かれた草花の現実感を消し、空間の整合性を意図的になくすことによって精神の表出をめざした。そこに使われたのは、レンブラントから継承した省略法と誇張法である。これを、日仏美術学会で口頭発表し、論文投稿する予定である。
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Research Products
(2 results)