2004 Fiscal Year Annual Research Report
北洋漁業と北方探検における「北洋」イデオロギーの形成過程の研究
Project/Area Number |
04J09961
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
神長 英輔 東京大学, 大学院・情報学環, 特別研究員(PD)
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Keywords | 歴史学 / 歴史社会学 / ロシア史 / 日露関係 / 水産業 |
Research Abstract |
1.要約 「北洋」とは何か。「北洋」とは特定の物語構造のことである。1930年前後の雑誌記事や書籍における言説の分析を通じてこれを実証した。 2.詳細 2.1.今年度の研究の目的 今年度の研究の目的は「北洋」に関わる雑誌記事や書籍に書かれたさまざま言説の分析通じて、以下の三つを明らかにすることだった。その1.「北洋」とは何か。人々は何を「北洋」として了解しているのか。「北洋」として何が語られているのか。その2。人々はどのようにしてそうした共通の了解を持つに至ったのか。その3。そうして広まった「北洋」についての共通の考え方が人々に何をもたらしたか。 2.2.今年度の研究の成果 今年度の研究成果として下記の3つの見解が得られた。 1.「北洋」「北洋漁業」という語は1930年前後から使われるようになり、数年のうちにひろく定着した。また、「北洋」「北洋漁業」の定義は人によって多岐にわたる。にもかかわらず「北洋」「北洋漁業」は共通了解である。 2.沿革から語り始めるような、よくある「北洋の歴史」言説を物語とみなしたところ、物語としての構造が似ていることに気づいた。ここでの「構造」とは形態論的な意味での「構造」である。この特定の構造こそが「北洋」言説を特徴づけている。すなわち「北洋」とは物語の構造上の特徴であるという見解を得た。 3.「北洋漁業」が発展したから「北洋」という言葉が一般に受け入れられた、という従来の一般的な見解には同意できない。「「北洋漁業」が発展した」という見解は1930年前後に「北洋」という語が広く定着したことの結果に過ぎない。この新たな見解も今年度の研究成果である。
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Research Products
(3 results)