2005 Fiscal Year Annual Research Report
農村・農業のセーフティネットと農村労働力流動に関する実証研究-タイの事例から-
Project/Area Number |
04J09973
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武井 泉 東京大学, 東洋文化研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | タイ / 労働力移動 / 農村開発 / 所得格差 / 貧困 / アジア / 開発経済 / 農業経済 |
Research Abstract |
本研究では、タイ国において(1)東北部ウボンラチャタニ県において、農村部から都市部への労働力移動に関しての家計調査、(2)中部アントン県において、一村一品運動(OTOP)と家計の変化に関する調査、の2つの調査を実施した。 研究(1):タイではバンコクと農村には大きな所得格差があり、バンコクに大量の東北部農民が流入しているという固定概念が根強く存在している。しかし、所得格差の指標として適切な世帯収入や職業別の数値を用いると、その格差はそれほど大きくなく、人口センサスの移動者の数も純移動者数で見れば、バンコクから他の地方に移動している。その成果は「タイの所得格差:労働力移動から捉える」(池本教授と共著)松井・池本編著『アジアにおける開発と貧困』明石書店にまとめられた。 研究(2):アントン県での家計調査を実施し、その途中経過は2005年日本農業経済学会で「タイ農村における一村一品運動(OTOP)の導入と農村経済と家計の変化」として個別報告を行った。このなかで、事例村が一村一品運動の籠生産によって、経済・社会状況が変化し、原料を直接市場から購入可能な富裕層および生産リーダーと、原料を購入できない下請け層との所得格差・利潤率の格差が存在していることを指摘した。現在タイ国内での一村一品運動が急速に広まり、ブームとなっている一方で、この事例が示すように、村内のコミュニティの社会・経済的な要因を十分に考慮せずに政策を導入することにより、村内の所得分配が悪化し、住民の不満へと繋がる危険性があることを示した。
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Research Products
(1 results)