2004 Fiscal Year Annual Research Report
バナジウム酸化物の金属非金属転移機構解明を目指した第一原理シミュレーション
Project/Area Number |
04J10077
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 和磨 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 第一原理計算 / 最大局在ワニア関数 / constrained LDA計算 |
Research Abstract |
本年度は遷移金属や遷移金属酸化物などの解析で頻繁に使用されるモデルハミルトニアン、ハバード模型のパラメータを第一原理的に評価する為の方法論開発を行った。この模型は局在d電子間トランスファー積分tとオンサイト有効クーロン斥力Uの2つのパラメータをもつが、前者は系の最大局在ワニア関数を構築しこれの下でのKohn-Shamハミルトニアンのトランスファー行列の解析から、後者は上の最大局在ワニア関数により定義されるオンサイト占有数についてのconstrained LDA計算を実行することで求められる。私はこの計算手法のアルゴリズムを開発し、汎用性バンド計算プログラム「東京大学ab initio program package」に組み込んだ。本プログラムを東京大学物性研究所の「SR8000」にて高速稼動させる為のチューニングを行い、結果、計算時間をパソコンを用いた場合に比べて1/10まで短縮化させることに成功した。特に大規模計算を実行する場合に律速となるワニア関数構築部分については計算時間を約1/20まで短縮化できた。今回は本プログラムを3d遷移金属(Sc〜Cu)のオンサイト有効クーロン相互作用Uの評価に適用し、オージェ分光より得られる実験結果と比較した。スクリーニング効果を無視してクーロン斥力を見積もった場合、値は実験に比べて10eV以上大きかったが、この効果をconstrained計算により有効に取り込むことでU値は減少し実験を再現した。本計算は実験に見られるU値の原子種依存性(ScからCuにかけてU値が10eV程度増加する傾向)さえ再現しており、このことは本手法が単にモデルハミルトニアン構築の手段のみならず、実験結果の解釈においても有効であることを意味している。来年度は本研究課題の対象である遷移金属酸化物系に本手法を適用し解析を進めていく予定である。 以上の研究を進めるかたわら、以前より取り組んできた構造不規則系に関する振動スペクトルの理論的研究(アモルファスセレンの赤外吸収スペクトルへの中距離電子移動が及ぼす効果を考察したもの)に関する論文をひとつ纏めた。
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Research Products
(1 results)