2004 Fiscal Year Annual Research Report
フッ素の特性を活用した遷移金属アルケン錯体の反応:その促進と制御
Project/Area Number |
04J10229
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小池 徹 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | gem-ジフルオロオレフィン / 有機リチウム / シアノ基 / ピロール誘導体 / 5-endo-trig環化 / Baldwin則 / 含フッ素ヘテロ環化合物 |
Research Abstract |
gem-ジフルオロオレフィンと遷移金属錯体との相互作用を活用する有機反応について種々検討している過程において、同一分子内のフッ素原子のγ位にシアノ基を有する化合物を設計・合成した。これらの反応性を調べたところ、有機リチウムとの反応により、前例の少ない5員環形成反応が進行することを見出した。すなわち、アルキルリチウムを反応させるとシアノ基に対する求核付加と、それで生じるリチウムアミドによるgem-ジフルオロオレフィン部位への付加-脱離反応が連続して進行し、窒素原子のα位にフッ素原子を有するピロール誘導体が得られた。本プロセスは、通常では起こりにくい(anti-Baldwin則)となる求核的5-endo-trig環化が室温という温和な条件下で進行したことを示している。以下条件検討をおこなったこれまでの結果を述べる。 まず、有機リチウム試薬の反応性を左右する反応溶媒について検討した結果、エーテルのような配位性溶媒を用いたときには、反応は進行したが望む生成物は中程度の収率(49%)でしか得られず、副反応が進行した。一方、トルエンのような無極性溶媒を用いたときには、原料は完全には消失しなかったものの、副反応は全く起こらずに望む生成物を63%の収率で与えることが分かった。 次に分子内環化反応が受けやすい濃度の効果について検討した。先の条件(0.15M)よりも高濃度(0.30M)で反応をおこなったときは、収率は56%に低下した。逆に低濃度(0.075M)は、原料は完全に消失して最高73%の収率で含フッ素ピロール誘導体が得られることを明らかにした。 本反応は、求核的5-endo-trig環化が円滑に進行することを示すとともに、環炭素をフッ素化した含窒素5員環化合物の簡便な合成法となりうる。
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