2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J10304
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
石田 孝英 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 外生菌根菌 / 寄主特異性 / 東京大学秩父演習林 / Internal transcribed spacer / Terminal-RFLP |
Research Abstract |
本年度は、樹種ごとの外生菌根菌の種構成を明らかにするために、成熟した冷温帯林に生息する主要外生菌根形成樹種を対象にPCR-RFLP法による外生菌根菌種の特定を試みた。 東京大学秩父演習林内の自然林2林班から8樹種60個体を選び、2004年7、8月に菌根を採取し、根端をいくつかの形態に分けるとともに、各形態ごとに、ITS領域のTerminal-RFLP法により得られた3つのDNA断片によって遺伝子型を調べた。 13,847の根端を数えたところ、外生菌根未形成の根端は2つのみであった。1,013の根端の遺伝子型を調べたところ、148のタイプに分けられた。調査したすべての樹種に見られた外生菌根菌は、Cenococcum geophilumだけであり、83の遺伝子型は一樹種でのみ見られたが、そのうちの36は単一のサンプルからのみ得られたものであった。各樹種から見つかった遺伝子型総数は、調査した樹木個体数に依存し、さらに一樹種内で、もっとも多い遺伝子型でも頻度は約13%だったため、一樹種出現の遺伝子型の中から、樹種に特異的に感染する菌種を特定することは困難であった。また、樹木の属・科の関係と共通する遺伝子型数の間にも明瞭な関係は見られなかった。一方で、一樹種出現の遺伝子型の数は、いずれの樹種でも、その樹種内で見つかった遺伝子型総数の半数以下であり、また、それらの根端に占める割合は、一樹種出現の遺伝子型数の、樹種内の遺伝子型総数に対する割合よりも低かった。よって、多くの菌根菌は複数の樹種に感染する能力を持ち、狭い宿主範囲を持つものよりも、広い宿主範囲を持つものが、地下部を優占していると推測された。 また、同調査地から2週間おきに子実体を採集し、外生菌根形成種を含むと考えられる18属にわたり、計95の遺伝子型を得た。そのうち菌根の遺伝子型と一致したものは10属にわたる28遺伝子型であった。
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