2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J10304
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
石田 孝英 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 外生菌根菌 / 実生の定着 / 東京大学秩父演習林 / Internal transcribed spacer / Terminal RFLP / ミズナラ / イヌシデ |
Research Abstract |
実生の定着には、共生者である菌根菌の感染が不可欠であると考えられる。前年度の研究によって、外生菌根菌の群集構造は宿主となる樹種によって違うことが明らかになった。もし、成木の菌根相が実生の菌根形成に影響するのであれば、それは実生の定着可能性も左右すると考えられる。そこで、本年度の研究では、近傍成木が実生の菌根形成にどのように影響するのか調査した。 東京大学秩父演習林内の広葉樹が優占する自然林と、そこに隣接するカラマツ植林地、スギ植林地の林床から、ミズナラの当年生実生およびイヌシデの実生を合計178個体採集し、菌根菌感染率を測定した。外生菌根菌はITS領域のTerminal-RFLP法によって遺伝子型を決定し、各遺伝子型の塩基配列をもとに菌種の同定を試みた。また、根や菌糸が入らないような閉鎖型の根箱と、菌糸のみ通過できるように一面を網目にした根箱を埋設し、それぞれの根箱に播種したミズナラ実生の根端調査を行った。 ミズナラ、イヌシデともにスギ林から採集した実生の菌根菌感染率は広葉樹林、カラマツ林から採集した実生に比べ有意に低かった(ANOVA, P<0.001)。また、見つかった遺伝子型の数は、スギ林では両種実生とも4または6タイプであり、広葉樹林やカラマツ林から得た実生に比べて少なかった。広葉樹林から得た実生は両種とも、広葉樹成木と菌根菌群集の類似性が高く、カラマツ林から得た実生は、カラマツ成木との類似性がより高かった。これらの結果は、実生の外生菌根菌群集の形成が、近傍成木の群集に依存しているためであると考えられた。編目処理した根箱内の実生の外生菌根の割合は閉鎖型根箱との差が小さかったが、種数多様性は高く、根外菌糸による多様な菌種の感染が推測された。また、成木で約7%と最も多かったCenococcum geophilumの感染率は自然林から採取した実生では1%以下であるなど、実生に特有の菌根菌群集の存在が示唆された。
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Research Products
(1 results)