2005 Fiscal Year Annual Research Report
ワレカラ類(甲殻綱:端脚目)における有機スズ化合物の生物影響に関する研究
Project/Area Number |
04J10381
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大地 まどか 東京大学, 海洋研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 有機スズ化合物 / 生物影響 / 個体群動態 / 沿岸生態 |
Research Abstract |
本研究は、沿岸生態系を脅かしている有機スズ化合物(トリブチルスズ;TBT)に着目し、ワレカラ類を用いて生物影響評価を解明することが目的である。これまでの実験により、TBTは、海洋環境中で検出される濃度(10ng l^<-1>や100ng l^<-1>)の暴露により、ホソワレカラの生残、成長速度の減少、生殖障害および形態異常等に影響を及ぼすことが明らかになった。とくに、卵発生期間の比較的初期のTBT暴露により、メスの比率が増加することが明らかになった。ワレカラ類のメスの比率が増加した原因としては、1)TBTが性決定機構を攪乱したか、2)雄のTBTに対する感受性が雌よりも高いため雄の死亡率が増加したかのいずれかが考えられた。そこで本年度は、TBTの生残率への影響には雌雄差があるか否かについて検討した。 岩手県大槌湾の岩礁域より5種のワレカラ類を採集し、室温20℃、無給餌下で、各生物を48時間、7段階の濃度のTBT溶液(0、0.001、0.01、0.1、1、10、100μg TBTCl l^<-1>)に暴露し、雌雄別に半数致死濃度(LC_<50>)を算出した。 ワレカラ類のオスの48時間LC_<50>(1.3〜6.4μg l^<-1>)は、メス(1.2〜8.6μg l^<-1>)と比較して有意差が認められなかった。TBTに対する生残率への影響には雌雄差がみられなかった。以上の結果から、TBTによるワレカラ類の性比の攪乱は、生残率の雌雄差に起因するものではなく、性決定・分化機構が攪乱された結果によるものと考えられた。 これらの結果はMarine Environmental Research誌に公表した。
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