2004 Fiscal Year Annual Research Report
円石藻の石灰化を制御する酸性多糖の機能、細胞内動態、生合成に関する研究
Project/Area Number |
04J10382
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
尾崎 紀昭 東京大学, 海洋研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 円石藻 / コッコリス / 酸性多糖 / 石灰化 / 炭酸カルシウム結晶 / 有機基質 |
Research Abstract |
海洋性の微細藻である円石藻は炭酸カルシウム結晶(方解石)を主成分とする微細なスケール「コッコリス」を生産し、年間で約1億トンの炭素を固体として沈着することから地球の炭素循環に大きく寄与している。また、コッコリス形成はナノスケールで制御され、その形態は種に特異的であることから、その形成過程を理解することによって得られる知見は、材料科学の分野に新しい道を拓く可能性を秘めている。しかしながら、コッコリス形成の分子機構は依然として解明されていない。 これまでに私は円石藻Pleurochrysis属のコッコリスから微量の有機基質を精製・単離し、新規の酸性多糖CMAPの構造を決定した。平成16年度はCMAPの機能解析を行うにあたり、CMAPの細胞内動態を解明することを目的として、抗CMAP抗体の作製を試みた。まず、CMAPのみを抗原としてウサギに注射したが、良好な結果は得られなかった。そこで、現在はメチル化BSAとCMAPを混合抗原として抗体産生を試みている最中である。 以上のような生化学的アプローチに加えて、コッコリスの結晶学的特性を調べるために、走査型電子顕微鏡(SEM)と電子後方散乱回折(EBSD)を用いた鉱物学的アプローチによっても研究を行った。その結果、Pleurochrysis属のコッコリスを構成する方解石のa軸、c軸の2軸が規則的に制御されていることが明らかになった。また、円石藻Emiliania huxleyiおよびGephyrocapsa oceanicaにおいても、方解石のa軸がコッコリスの円周方向に向いていることが示唆された。CMAPのような有機物がこれらの制御にどう関わっているか解明するのが今後の課題である。尚、これらの成果は第7回(2004年度)マリンバイオテクノロジー学会で発表した。 また、SEM-EBSDを用いた機能解析法を開発し、試験管内でCMAPや真珠由来の有機基質を添加した際に生じる炭酸カルシウム結晶のモルフォロジーと結晶形を調べた。本方法を用いることによって、炭酸カルシウム結晶形成に及ぼす有機物の効果が簡便かつ精密に調べることが可能となった。
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Research Products
(6 results)