Research Abstract |
私の研究テーマは「民間団体の社会福祉活動に関する理論的・実証的研究」である.今年度は,その大きなテーマから議論を絞って研究を進めた.すなわち「『福祉社会』の韓国的経験と制度比較」という具体的なテーマを定め,一方では福祉社会論に関する理論的研究を,他方ではそれにもとづく経験的研究を進行してきた. まず,理論的研究においては,「論」としての「福祉社会」を解剖することによって,この議論が,福祉国家の縮小を主張する新自由主義的論理と同様に扱われる従来の議論とは異なり,実は,一方では市場原理や経済的合理性を重視する「新自由主義的側面」を持つが,他方では公共性や規範性など,経済的合理性とは異なる原理に基づく「制度主義的側面」を持っており,このような2つの側面を併せ持っていることを明らかにした.そして,そのような二重構図として捉えられる福祉社会論は,福祉問題に対する新自由主義的論理と同一視することはできず,むしろ「新自由主義的側面」を退け「制度主義的側面」を救い上げることによって,今日の福祉問題を分析する際の,新たな視点としての「制度主義的福祉社会論」を提唱した. 次に,「福祉社会」に関する経験的研究においては,主に近年の韓国的経験から理論的研究の成果に対する経験的反証を行った.1997年末のIMF経済危機以降,「新自由主義構造調整=市場経済化」のなかで見られた韓国における「福祉国家の形成」という経験,言うならば<市場経済化と福祉国家化の併行>という特殊の経験から,「制度主義的福祉社会論」のもつ重要な論点を見出すことができるとともに,そのような論点から韓国における福祉国家の形成過程を明らかにすることが可能になる.今年度の研究では,「制度主義的福祉社会論」の視点から,1980年後半から2000年代前半にかけて,「福祉社会」の韓国的経験の具体的事実に接近し,その特徴を明らかにすること試みた.
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