2004 Fiscal Year Annual Research Report
視覚系における空間周波数成分の処理およびパタン知覚への影響に関する多角的考察
Project/Area Number |
04J10412
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谿 雄祐 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カフェウォール錯視 / 空間周波数成分 / 両眼分離提示 |
Research Abstract |
刺激の「見え」が変化しなくても、図形の空間周波数成分によってカフェウォール錯視の方向が変化することを示す実験を行った。矩形波縞と「矩形波から3f成分を除去した縞」の2種類の縞で構成されたカフェウォール図形に対し、それぞれの基本波成分の振幅を変化させた。矩形波縞からMF縞へと変化する途中で、錯視方向が変化するのに対し、3fを含まない縞では基本波成分の振幅が0になっても錯視方向は変化しなかった。この結果を日本視覚学会夏季大会にて発表した。 さらに、カフェウォール錯視が我々の視覚系のどの処理段階で生じるのかを検討するために、カフェウォール図形の両眼分離提示実験を行った。刺激図形の分離は、3本の縞からなるカフェウォール図形の偶数番目の縞と奇数番目の縞を別々の目に対して提示すると言う方法で行った。両眼に提示される刺激の差違が大きいと視野闘争が生じ刺激を知覚することが困難になるため、刺激の輝度コントラストは低くした。また、エッジなどの際立った特徴が融像の誤対応を引き起こすことを避けるために、通常のカフェウォール図形では矩形波縞であるところを、正弦波縞に置き換えて刺激を作成した。また、融像を助ける参照枠を刺激の外側に提示した。 課題は、縞の間隙であるモルタルと呼ばれる細い線分の傾きに対する2肢強制選択であった。このことで、両眼融像に伴う何らかの像の歪みと錯視によって生じるモルタルの傾きを区別するためであった。なお、比較すべき刺激として、単眼にのみカフェウォール図形を提示する条件を設け、視野闘争および図形の知覚されにくさに起因する傾き判断と錯視由来の傾き判断を区別可能にした。 結果は、カフェウォール図形を両眼分離提示すると錯視が生じないと言うものであり、このことから両眼からの情報を統合する以前の、初期的なレベルの処理によってカフェウォール錯視が生じていることが示唆された。
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