2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J10427
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片岡 大右 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 美学 / 詩学 / シャトーブリアン / 18世紀フランス / ロマン主義 / アリストテレス / ミメーシス / カタルシス |
Research Abstract |
平成16年度の研究実績としてはまず、「仏語仏文学研究」誌に発表された論文、「シャトーブリアンと古典主義詩学--ミメーシス、カタルシス、そしてキリスト教」が挙げられる。この論考は、報告者の修士論文以来の研究のひとつの成果であると同時に、学術振興会特別研究員として奨励費の交付を受けつつ行われている本研究において、中心的な意義を持つものと言うことができる。フランスのプレ・ロマン主義を代表する作家とされ、ロマン主義以降の詩人たちの感受性の母胎となったとすら言いうるシャトーブリアンであるが、それだけに、彼と先立つ時代、すなわち啓蒙の世紀と称される18世紀との関係は、単純な対立関係によって語られるのが常であった。美学的な見地から言えば、18世紀に至るまで存続していた古典主義詩学の伝統を打ち破り、ロマン主義的と名づけられるべき新しい詩学を打ち立てたのがシャトーブリアンであるとされてきたのである。本論考が試みたのは、こうした単純な見方を相対化するべく、17世紀から18世紀に至るフランス古典主義詩学の伝統とシャトーブリアン的な詩学との関係を再検討に付すことにほかならない。まず、アリストテレスの『詩学』との比較を通してフランス古典主義の諸原理を見極める作業がなされたが、それにより、フランス古典主義の核心に横たわるのが、第一の現実とされるもの(超越的な存在であれ、具体的な感覚的事物であれ)との関係における、芸術作品の存在論的劣等性の認識であることが明らかになった。そしてそのような理解を踏まえてシャトーブリアンを読むことにより、彼の詩学が先立つ時代との完全な断絶というよりは、深い影響下での倒錯的な受容を通して形成されたものであることを示しえたのである。この成果を出発点にして、報告者は、さらに研究を深めるべく、18世紀および19世紀フランスの関連文献の調査および、現代の諸研究の検討に努めてきた。
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Research Products
(1 results)