2004 Fiscal Year Annual Research Report
自由の最小可能条件-行為主体性を否定する社会的排除のメカニズム
Project/Area Number |
04J10429
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内藤 準 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 自由 / 行為主体性 / 責任 / 権利 / 社会的排除 |
Research Abstract |
特別研究員採用初年度(任期2年)である平成16年度は、平成17年度にかけて本格的な社会分析、理論構築を行うための、基礎となる作業を行った。 本研究の課題は、(1)社会学的な「行為主体的自由」の概念を核とした社会分析の枠組みを構築すること。(2)人々に最低限必要な行為主体的自由を賦与しながら、近年焦眉の問題となっている「望ましい共生社会」を実現するための条件を明らかにすること、にある。以下は、上記の課題に即して平成16年度に達成された研究実績である。 (1)研究論文「自由と責任の制度--パレート派リベラルの不可能性と契約自由解の可能性」(投稿・審査中): A・センが提起した「パレート派リベラルの不可能性」を素材に、この不可能性に対して従来提案された代表的な解消の試みの問題点と基本発想を精査し、新たな解消法を導出した。その作業を通じて、リベラリズム的な制度において、行為選択の自由と責任が果たしている機能と、共生社会の実現のために問われるべき論点を明確にした。 (2)研究論文「スティグマなき個人の差別--主体性経験と排除概念による研究視角の再定位」(投稿・審査中): 社会心理学や社会学の伝統的な差別研究において自明視されてきた、いくつかの暗黙の想定を明るみにだし、これまでの研究で「望ましい関係」と同一視されてきた「個人間の関係」が、人々の行為主体性の実現条件としては不十分であることを明らかにした。 (3)研究報告「社会学的共生理論の条件」(第77回日本社会学会大会 2004年11月21日): 社会的相互行為状況において、行為者たちに最低限必要な行為主体的自由が確保される条件について、社会学における相互行為のパラダイムを設定したT・パーソンズの理論の考察を通じて、モデル化を試みた。そのうえで社会学の基本問題である「社会秩序問題」を、これから求められる共生社会の分析へと結びつけることを試みた。
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