2004 Fiscal Year Annual Research Report
ロマン主義的批評-Fr.シュレーゲルとシューマンを手掛りとする超分野的批判の試み
Project/Area Number |
04J10449
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 恵美子 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | シュレーゲル / シューマン / ロマン主義 / 批評 / イロニー / ロマン的イロニー |
Research Abstract |
本研究はFr.シュレーゲル及びR.シューマンを中心的研究対象として、ドイツ・ロマン主義に内在する二つの問題-第一にロマン主義的芸術批評、そして第二に、その芸術批評を媒体とする、文学と音楽の、美学理論上、実作上の影響関係-を、超ジャンル的視座より解明しようとするものである。本年度はシュレーゲルの批評理論分析を主要な研究課題とし、その成果を「イロニーの原理-ロマン主義芸術試論」(「詩・言語」第61号)として発表した。本論はまずシュレーゲルの批評理論のうちで、イロニーが止揚対象とする「詩言語における制約」を二つに分類し、「第一の制約」が「言葉の意味内容」であることを示す。そして「第二の制約」の見極めに際して、本稿は、従来のイロニー研究では(イロニーを客観的原理であると主張する場合であれ、主観的原理であると主張する場合であれ)芸術家の「主観性」として一つにまとめられていたものを、「経験的主観性」(一般的語法での主観性に相当)と「美的主観性」(普遍妥当性を有するものであり、シュレーゲルの術語ではゲニウスに相当する。その要請は、芸術作品において芸術の理念が自らを開示しようという働きに一致する)に二分し、この区分のもとに改めてシュレーゲルの理論を分析した結果、イロニーを要請する真の主体が「美的主観性」であること、そしてイロニーとは芸術創作における「経験的主観性」の関与を否定し(その手段は、「経験的主観性」の創作した一構成部分への、矛盾する構成部分の対置。つまり作品内への内在的破壊要素の導入)、芸術作品を客観化し、理念へと高次化させる手段であることを導き出した。芸術家の「経験的主観性」-詩芸術における第二の制約-は詩芸術のみならず音楽を含む諸芸術の制約でもあるため、本論は、ロマン的イロニーが音楽芸術に応用される為の理論的前提を提示する研究としての意義をも持つ。
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