2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J10455
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
倉田 剛 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | オーストリア哲学 / 初期現象学 / マイノング / フッサール |
Research Abstract |
われわれの研究課題は、19世紀末から20世紀初頭にかけて主にオーストリアで活動した哲学者たち(F.ブレンターノ、A.マルティ、A.マイノング、E.フッサール)の思想を哲学史の中に正当に位置づけ、その現代哲学における射程を探ることである。この課題についての研究発表は以下のようになされた。 (1)「ブレンターノ学派における命題的対象について」第4回フッサール研究会(平成17年3月、八王子セミナーハウス)における発表。われわれは、ブレンターノ学派において「判断の対象」として論じられた<事態>という概念を、マイノングのObjektiv、マルティのUrteilsinhalt、フッサールのSachverhaltを参照しつつ詳細に検討し、この事態概念としばしば混同されるボルツァーノの<命題自体>という概念からそれを適切に区別することを提案した。さらに、これらの概念がそれぞれ現代の哲学的論理学や形而上学においてどのように発展させられうるかを検討した。 2)「対象論について」哲学会第43回研究発表大会(平成16年11月、東京大学)における発表。われわれはこの発表において、マイノング対象論の基本原理を概観し、とりわけその述定に関する原理(独立原理)を、ラッセルの批判を反駁するかたちで詳細に論じた。その中では現代論理学における「マイノング主義」が積極的に参照され、マイノング意味論の今後の可能性が示唆される。 以上、われわれの研究課題に関連する二つの研究発表をもって平成16年度の研究成果とする。
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