2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J10480
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三瀬 朋子 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 自己決定権 / 生命倫理 / アメリカ法 / 医療 / 利益相反 / 臨床研究 / インフォームド・コンセント / ソフト・ロー |
Research Abstract |
私の研究目的は、現代医療において「自己決定権」理念と「法」が果たす役割を明らかにすることであった。3つの方向で研究を行った。 1.1年目に引き続き、脳死移植、生殖補助医療を中心とした新しい医療倫理問題の議論状況を、分析対象とした。 2.医療における「法」の果たす役割を「ソフト・ロー」というキーワードと関連させて研究した。医師という専門家の行動を「法」によって規制するととが最も望ましいのが、医師会などの専門家団体の自律的規則の果たす役割と意義とは何か、さらにそのような自律的規制体制が実効性を持つ条件は何か、という問題意識を持ち、研究した。成果のひとつとして、アメリカ医師会の倫理綱領の翻訳作業に携わったことをきっかけに、その綱領の内容、アメリカ社会での役割につき分析し、シンポジウムにて発表し、本『生命倫理と法』の「アメリカ医師会倫理規定の特徴」と題する章を執筆した。 3.米国で近年注目されている、「医学研究における利益相反問題」を扱った。従来、患者の自己決定権を妨げるものとして医師の「パターナリズム」が指摘されてきた。だが、先端バイオ研究においては、多額の金銭的インセンティヴが医師の側に生じるようになり、新たな問題が生まれた。典型的には、製薬企業の株などが、その企業の製品について臨床研究を行う医師に提供されるという状況である。先端バイオ研究の促進という社会政策と患者の自己決定権等の福祉を両立させるために米国が採った政策と議論につき、この2年間の動きに絞って詳細に調査・研究した。この問題は、米国で特に1999年以降議論されてきたもので、最新の厚生省ガイダンスが2004年に発表されたものの、その内容が拘束力の弱いものであったこともあり、目下活発な議論が続いている。最新の文献調査に加えて、米国人専門家への聞き取り調査を行い、成果を20万字程度の論稿として取りまとめた。
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