2004 Fiscal Year Annual Research Report
不良債権問題と銀行規制-1915〜42年、大蔵省検査体制を中心に-
Project/Area Number |
04J10496
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
邉 英治 東京大学, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | プルーデンス規制 / 大蔵省銀行検査 / 不良債権問題 / 不良債権処理 / 経営健全性維持 / 金融危機予防 |
Research Abstract |
まず、1915〜42年におけるプルーデンス規制に関連する資料収集を各地で行った。具体的には、みずほ銀行金融資料課所蔵史料(安田銀行)、大阪大学経済史・経営史史料室所蔵史料(三和銀行など)、北海道開拓記念館所蔵史料(北海道拓殖銀行など)、群馬県立文書館所蔵史料(群馬大同銀行など)を中心的に収集した。特に、戦前には事実上、実施されていなかったと考えられてきた安田銀行や三和銀行といった財閥系銀行に対する大蔵省検査史料をはじめとするプルーデンス規制関連の資料を収集できた点は、今年度の大きな成果といえよう。あわせて、中央当局(大蔵省・日本銀行)のプルーデンス規制の方針・理念の歴史的推移を明らかにするため、日本銀行金融研究所アーカイブ、東京大学経済学部図書館、国立国会図書館、東京大学史料編纂所などで、関連する資料・書籍の収集も行った。 このように、資料収集に多くの労力を費やす一方で、収集資料の分析も順次進めた。この1年間の作業だけでも、以下の点が明らかとなった。 1930年代前半、昭和恐慌の余波の中で、不良債権問題に悩まされる銀行が広範に存在した。大蔵省銀行検査では、不良債権処理の慫慂が行われたが、特に関係者向けへの貸出に特別な注意が払われていた。1930年代後半に入ると、徐々に不良債権処理は進展する。この中で、大蔵省検査の方針も、不良債権の半強制的な処理から、長期的な視野からの不良債権の漸進的処理へと移行、銀行側のリスク管理能力の向上を図る「諸調書」の提出が義務付けられた。さらに、不良債権処理が終結した銀行の検査についても、経営健全性維持と金融危機予防(不良債権の発生防止)の目的が放棄されることはなかった。 以上の研究ともかかわって、今年度は、戦時体制下における大蔵省検査を実証的に検討した論文を発表した。
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