2004 Fiscal Year Annual Research Report
マドレーヌ・ヴィオネ論-モードにおける近代的システムと眼差しの誕生
Project/Area Number |
04J10500
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井伊 あかり 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 表象文化論 / ファッション / 都市論 / オートクチュール / フランス |
Research Abstract |
本年度は、マドレーヌ・ヴィオネ研究の礎となる資料調査及び収集を重点的に実施した。ヴィオネやオートクチュール関連の書物・出版物の網羅的な収集・精読、またそれに加えてフィールドワーク(研修)を通しての資料調査を行った。平成16年12月の関西出張では、神戸ファッション美術館において、主にヴィオネの活動期間である1920年代30年代のファッション雑誌の調査にあたった。また平成17年2月のパリ(フランス)出張では、パリ市立モード美術館所蔵のヴィオネ作品およびオートクチュール全般に関する資料調査を行った。ここで得たデータを用い、ヴィオネ作品のレプリカを製作し研究の補助材料とした。上記の作業をもとに、ヴィオネ作品に関する図像資料、文書資料データをまとめたが、これは今後の論文執筆の土台となるだろう。また慶應大学SFC(題目:「マドレーヌ・ヴィオネ-ファッションにおけるフォルムの実験」、7月30日)及び玉川大学芸術学部(「アンチ・ファッションとしてのパリ・シック」、11月17日)において講演を行った。前者はファッション史におけるヴィオネの独創性をフォルムを観点に論じ、後者ではパリという都市の位置付けをファッションを観点に論じた。これはヴィオネ研究に時間軸的・空間的な広がりをあたえるものである。さらに平行して、ファッションを切り口に三都市の文化を考察する著書『東京・パリ・ニューヨーク-ファッション都市論』の執筆にあたった。南谷えり子氏との共著というかたちで出版されたが、歴史的・文化的背景をふまえたパリ・ファッション考察の章を主に担当した。研究者は、ヴィオネの創作活動を素材とした緻密な分析のみならず、時代や社会との結びつきからファッションを捉えるマクロな視点を兼ね備えた研究を目指しているが、本書はそのような意味でヴィオネ研究を補完するものであると考えている。
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