2004 Fiscal Year Annual Research Report
モロッコにおける出産の医療化と地域社会の変動-住民の選択的行動と葛藤-
Project/Area Number |
04J10503
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井家 晴子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 妊娠・出産 / リスク / 意思決定 / 文化人類学 / モロッコ / 実践 / イスラーム |
Research Abstract |
モロッコ王国では国民に対する医療サービスの向上が課題であるが、特に妊産婦に対する保健医療整備は遅れており、モロッコの妊産婦死亡率は10万人当たり230人に上っている(日本の妊産婦死亡率は10万人当たり5.9人(1999年))。また、都市部と農村部の格差が著しく、都市部の妊産婦死亡率は10万人当たり125人であるのに対し、地方部では307人と高い上、地方部の妊産婦検診率は21%、医療施設での分娩率は27%と著しく低い。地方村落部における妊産婦の保健医療体制は深刻な状況にある。 本研究では、モロッコ王国、オートアトラス地方アイト・イクテル村を対象として、妊娠・出産に関する人々の医療施設の利用状況と、医療化に伴う変容過程を分析した。調査においては特に、人々が、TBA(伝統的出産介助者)が行う伝統的な出産介助法と病院における近代医療に基づく出産法のどちらをどのような過程を経て選択するのかに焦点を当てた。出産において人々がどのような相互作用を行い、刻々と変化する環境の中でどのような選択を行っていくのかに注目した。 また、TBAトレーニング(地域の伝統的助産婦に西洋医療の再教育を行うトレーニング)を軸に、行政側と民衆側の溝の部分でTBAたちがどのような働きをしているか見ていった。トレーニングで教育されるハイリスク妊娠・出産、その行政側からの「異常」の定義の働きかけに住民側がどのように対応するか、アクターによってその反応がどのように違い、相互作用を起こし、出産方法を決定していくのかを見ていった。個々のアクターが「異常」をどのように捉えるのかを見ることによって、行政側だけでなくTBAの暮らす地域も多元的に見ることが可能となった。
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Research Products
(1 results)