2004 Fiscal Year Annual Research Report
池田内閣成立から対中国交正常化に至る時期の、日本の中国政策についての歴史学的研究
Project/Area Number |
04J10507
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神田 豊隆 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 日本外交史 / 日中関係史 / 東アジア国際関係史 / 日本:中国:台湾:アメリカ / 日台関係史 / 米中関係史 / 冷戦史 |
Research Abstract |
研究対象時期の池田・佐藤内閣期のうち、まず佐藤内閣の中国政策については、本年度開始後まもなく、その分析を終えることが出来た。その際、日米の外交一次史料や、個人文書に依拠することにより、佐藤自身の構想や、実際に佐藤内閣によって追求された外交が、従来の過剰な対台湾関係重視のイメージとは異なり、対中・対台湾関係の両立を現実的な範囲で模索するものであることを明らかにした。さらに、従来は注目されてこなかったが、佐藤内閣の中国政策にとっては、国連中国代表権問題の動向が大きな要因となっていた。 その後、池田内閣の中国政策に関する分析へと移ったが、まず、外務省外交史料館に所蔵の史料の収集・検証から始めた。その結果、既に池田内閣の初期において、外務省内では、大陸中国の承認と対台湾関係の実務レベルでの維持が構想され、さらにそうした外交的転換の機会として、米国の東アジア政策に加え、国連中国代表権問題の動向が大きな意味をもっていたことを明らかにした。すなわち研究対象時期において、日本が中国政策に関して抱いていた戦略は、かなりの程度一貫していたと考えられるのである。 さらに続いて、日本の中国政策そのものに加え、それを取り巻く国際環境の検証に力を注いだ。その際、近年研究の進展が著しい冷戦史や、アメリカ外交史の過去の業績を整理し、その上でアメリカ側の史料の分析を進めた。その結果、まず国連中国代表権問題に関しては、その展開が従来描かれていたアメリカ主導によるものというより、むしろ多国間的に処理されていたことが明らかになった。特に、この問題ではイギリスや台湾の意向も大きなウェイトを占め、さらに日本も一定の役割を果たしていたのである。またその他、池田内閣期に大きく変化した中ソ関係や、台湾による大陸反攻準備が、アメリカの東アジア政策・日本の中国政策にもたらした影響についても分析を進めた。
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