2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J10616
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
相川 恒 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | コヒーレント伝導 / Fano-近藤効果 / Aharonov-Bohmリング / 量子ドット / 位相シフト |
Research Abstract |
量子ドットとAharonov-Bohm(AB)を組み合わせた系において、量子ドットが近藤状態になると近藤共鳴状態の存在のために位相シフトが非近藤状態のものとは大幅に変化し、Fano-近藤状態と呼ばれる伝導状態が現われることが期待されている。このような伝導はこれまで理論的にしか考察されていないが、この新しい伝導現象の観測によって更に近藤状態にある量子ドットの位相シフトに関する情報が得られることも期待されている。また、これは2量子ドット系で近藤状態を扱う際の基礎となるものである。 Fano干渉を観測するためには系全体にわたる高いコヒーレンスが必要であるが、そのために試料サイズができるだけ小さいものを利用した。これによって比較的明瞭なFano効果を観測し、さらに量子ドットを近藤状態にすることでFano-近藤状態を実現した。AB干渉成分を抜き出すことでコヒーレントな成分だけに着目したところ、近藤状態に期待されるπ/2の位相ロックと近藤領域全体でπ変化する位相シフトが確認された。この結果は、これまで未解決だった近藤状態の位相シフトに関して貴重な情報を与える。 次に量子ドットの数を2つに増やして、ABリングの各経路に量子ドットが埋め込まれた並列2量子ドット系での実験を行なった。ABリング構造を用いているのは本研究の特長であり、これによって現象がコヒーレントな干渉によるものかどうかを判断できる。 実験では2つの量子ドットを通過した伝導成分によるAB干渉が観測できた。だだし、全伝導成分中に占めるコヒーレント成分の割合は最大でも10%程度と小さく、伝導度形状に大きな変化を生じさせるには十分ではなかった。これに関しては、2つの量子ドット間の距離を小さくすることや、ABリングを構成している細線の幅をより細くするという改良を施した試料を用意することが有効ではないかと考えている。
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Research Products
(2 results)