2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J10635
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大木 聖子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | P波S波速度比 / ポアッソン比 / マントルトモグラフィー / 速度異常比R / S-P走時差 / 波形相関法 / 物理分散 / マントルダイナミクス |
Research Abstract |
地震波トモグラフィーからマントルダイナミクスの解釈をするには,速度異常の成因を知る必要がある.その成因が例えば温度異常であった場合,高速度異常域は低海域を示し,高密度状態,すなわち沈降していることが言える.また,例えば鉄の含有量の違いによる場合,高速度域は鉄成分の欠如を示すことが分かっており,この地域は低密度状態となり,上昇するであろう.このように速度異常の成因によって,マントルダイナミクスの解釈はまったく異なるのである.報告者の研究目的は,地震波速度異常の成因に物理的,化学的制約を与えることにある. 報告者はP波とS波の速度比(Vp/Vs比)に着目し,そのトモグラフィーを構築する研究を行ってきた.Vp/Vs比は速度異常の成因によって異なる値を取る物理量であり,高圧実験などの物質分野における測定値と直接比較しうる物理量であるため待ち望まれてきたが,既存のP波・S波トモグラフィーを直接比較して単純に求めることはできなかった.報告者は広帯域地震計によるS-P走時差と,既存の高精度P波トモグラフィーとを使うことで,Vp/Vs比を直接のモデルパラメータとした全マントルトモグラフイーを構築することに初めて成功した.S-P走時差の測定において独自のS波合成手法を用いたこと,その際の物理分散のリファレンス周波数を定量的に決定したことは,報告者による先行研究Oki et al.,2004,JGRにある通りである. また報告者はVp/Vs比トモグラフィーを応用し,P波とS波の速度異常比(R=dlnVs/dlnVp)のトモグラフィーモデルを実現した.これはVp/Vs比と並んで議論される重要な物理量であるが,その3次元的分布を提示したのは本研究が初めてである.
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