2004 Fiscal Year Annual Research Report
大規模サーベイを用いた重力レンズ統計と宇宙の構造形成
Project/Area Number |
04J10636
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大栗 真宗 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 宇宙論 / 暗黒物質 / 重力レンズ / 銀河団 |
Research Abstract |
1.重力レンズ確率の理論予言に関して、これまで無視されてきたレンズ天体の非球対称性が実はきわめて重要であることを指摘した。さらに銀河団による重力レンズクエーサーSDSS J1004+4112の発見を標準的な暗黒物質模型を仮定して理論的に期待される重力レンズ確率と比較し、よく一致することを示した。従ってSDSS J1004+4112の発見はそのような標準暗黒物質模型を支持する結果であると解釈できる。 2.国際共同プロジェクト、スローンデジタルスカイサーベイ(SDSS)を用いて重力レンズ系の探索を行い、すばる望遠鏡やハワイ大学2.2メートル望遠鏡などを用いた追観測の結果あらたに三つの重力レンズを同定することに成功した。またそれらの像の配置を再現する質量モデルを求め、期待される複数像間の時間の遅れを見積もった。また現在までの10個以上のSDSS重力レンズの確率分布を理論的な期待値を比べた。 3.暗黒物質が宇宙年齢程度の寿命を持ちうるかどうかしらべるため、そのような宇宙における宇宙背景放射の揺らぎを計算して、最新の観測結果と比較した。その結果、暗黒物質の寿命は宇宙年齢の10倍以上でなければならならず、従って暗黒物質の多量の崩壊が許されないことを示した。この制限は崩壊パターンなどに仮定を置かない一般的な制限であり、かつ現在最も強い制限となっている。 4.暗黒物質ダークハローは滑らかではなく内部にサブストラクチャをもつことがしられている。このサブストラクチャの質量および空間分布を、サブストラクチャに働く物理過程を考慮して求めた。この模型を数値シミュレーションの結果と比較したところ、両者がよく一致することがわかった。この解析模型はスバストラクチャを取り込んだ重力レンズ確率分布の計算等においてその威力を発揮するものと期待される。
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