2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J10700
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
本田 充彦 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | シリケイト(ケイ酸塩鉱物) / 中間赤外線 / すばる望遠鏡 / 惑星系形成 |
Research Abstract |
ケイ酸塩鉱物からなる固体物質(ダスト)は惑星の主原料のひとつである。若い星のまわりに存在するガスとダストからなる星周円盤において、惑星系形成が進むと考えられているが、惑星系形成に伴ってこれらのダストも、初期の状態から変化・進化すると考えられる。我々は、すばる望遠鏡に搭載した中間赤外線観測装置COMICSを用いた観測により、これらの若い星の周りに存在するダスト進化を観測的に探っている。その結果、惑星系形成が進み、中心星の周りに惑星の種である「微惑星」とよばれる天体が形成されたと考えられている「ベガ型星」とよばれる天体の一つであるHD145263という星の周りに、結晶化したシリケイトダストが存在していることを明らかにした。ベガ型星からの結晶化したシリケイトダストの検出は2例目であり、ベガ型星のダストが星間空間の非晶質なシリケイトダストから大きく変性していることを示唆している。さらに、HD145263の周りのシリケイトには鉄が多く含まれている可能性があることがわかった。これは、これまでベガ型星よりも若いハービックAe/Be型星やTタウリ型星で見つかってきたマグネシウムに富むシリケイトよりも、隕石で見つかっている鉄・マグネシウムをさまざまな割合で含むシリケイトに組成がより近い。隕石の研究から、鉄を含むシリケイトはガスからの凝縮では形成するのは難しいと考えられており、微惑星と呼ばれるキロメートルサイズの天体内部での変成作用で形成されたとの説が有力である。よって、このような鉄を含んだシリケイトダストの存在は、ベガ型星の周りに微惑星が存在し、そこからダストが供給されているという描像と整合的である。本観測結果は、ベガ型星の周りに微惑星が確かに存在するということの新しい状況証拠の一つであると考えられ、さらにダスト組成から「原始惑星系円盤」と「デブリ円盤」を区別できる新しい手法の可能性を示唆している。
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Research Products
(1 results)