2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J10895
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
須磨 航介 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 分子分光学 / HOOOラジカル / H_2O_3 / 分子錯体 / 分子間相互作用 / 大気化学 / マイクロ波分光 / 短寿命分子 |
Research Abstract |
本年度の研究ではフーリエ変換型マイクロ波分光及び二重共鳴分光法を用い、HOOOラジカル及びHOOOHの回転遷移の観測に初めて成功した。これらの分子は水素、酸素のみからなる極めて基本的な分子種であり、古くから化学反応の中間体として存在が予言され、実験研究の必要性が提示されてきたが、その反応性の高さ故に直接的な実験研究は皆無であった。最近になって幾つか論文が大気、反応、生物化学分野で相次いでこれらの分子種の役割が無視できないものであることを指摘したことが発端となり、現在も主に理論計算により多くの研究が報告されている。本研究結果により、これらの分子の気相での存在が初めて直接的に実証され、その分子構造を明らかにすることができた。HOOOは非直線状に水素、酸素原子が連なり、平面トランス型の配置をとり、HOとOOが水素結合並に弱く結合し、HO-OO結合距離は通常の酸素の単結合に比べかなり長いことが分かった。既報の理論計算の結果とはかなり異なっており、既存の理論計算は大幅な改善が必要であることが分かった。HOOOHは理論計算の結果と良く一致し非平面でC_2対称性を持つことが分かった。HOOOHの場合、観測可能な遷移は限られ試験的に三重共鳴分光法を開発、適用することで分子種の同定に必要な遷移を観測した。観測された遷移の一つが電波望遠鏡によるW51でのサーベイで報告されている未同定線に一致しており、星間空間でもHOOOHが何らかの役割を果たしていることが期待される。尚、これらの研究結果は米科学雑誌Scienceに投稿を予定している。このほか開殻分子錯体Ar-HO_2のマイクロ波分光にも成功した。これにより、大気反応で重要な役割を果たすことが期待されるH_2O-HO_2錯体の検出の基礎を築くことができた。
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