Research Abstract |
オレフィン類に対し高活性な金属エノラートの創製を目的とし,窒素上に様々な置換基を有する亜鉛エナミドを検討した.結果,2,4-ジメチルフェニル置換のエナミドが最も高い活性を示すことを見出した.これにより,単純な末端オレフィン,1,1-ジ置換オレフィンを用いた,2級,3級アルキル基の導入が可能となった.また,生成した有機亜鉛中間体を,銅,パラジウム触媒存在下,1,4-付加反応や,カップリング反応に利用することで,逐次的な官能基の導入,複雑な炭素骨格構築を行うことができる.さらに,密度汎関数計算により本反応の反応機構を解析した結果.オレフィンと亜鉛とのπ錯体形成の後,6中心舟型の遷移状態を経由して,炭素-炭素結合と炭素-亜鉛結合が協奏的に生成する経路が求まった. 次に,付加により生成する不斉中心の立体化学の制御を試みた.活性な内部オレフィンであるアルケニルホウ酸ピナコールエステル(以下アルケニルボロネート)に,種々の亜鉛エナミド,亜鉛化ヒドラゾンを作用させたところ,t-ブチル基を亜鉛のダミー配位子として持つ亜鉛化ヒドラゾンが,99%以上の高いジアステレオ選択性を発現することが分かった.付加により生成したγ-ホウ素/亜鉛化ヒドラゾンを,塩化銅(II)存在下,臭化アリルや2-シクロヘキセノンにより捕捉することで,3-4連続不斉炭素中心を有するγ-ホウ素化ヒドラゾンをほぼ単一の立体化学で得ることができた(95-99%ds).本手法は,環状,鎖状の基質いずれにおいても高い選択性が発現すること,SAMPヒドラゾンを用いることで光学活性体の合成も可能であること(95%ds)など有機合成手法として優れた特徴を有する.また,密度汎関数計算により,6中心舟型遷移状態における嵩高いホウ酸エステル部位と亜鉛上のt-ブチル基の立体反発が,選択性の発現要因となっていることが明らかとなった.
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