2005 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ空間を用いた新規スピンクロスオーバー錯体の配列制御と機能開拓
Project/Area Number |
04J10944
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
藤ケ谷 剛彦 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | スピンクロスオーバー / ゾルゲル転移 / 鉄トリアゾール錯体 / 一次元高分子錯体 / スイッチング材料 / ソフトマテリアル |
Research Abstract |
スピンクロスオーバー錯体は2つのスピン状態を持ち、それらが熱や光照射に応答してスイッチング可能であることから、メモリーデバイスなどへの応用が期待されている。これまでの研究において我々は、適切な配位子設計を行うことで、スピンクロスオーバー現象と、バルクの液晶相転移現象がシンクロナイズ可能であることを見い出した。本年度はさらに長鎖アルキル鎖を有するトリアゾール配位子と鉄からなる一次元高分子スピンクロスオーバー錯体がアルカン溶媒中においてゲルを形成することを見い出し、さらにゾルゲル転移とスピンクロスオーバーがシンクロナイズしていることを明らかにした。 ゲル状態においては、配位子と対アニオンが鎖内において水素結合していることが赤外吸収測定から確認された。この水素結合が低スピン状態の配位空間を安定化させ、かつゲル状態の構造安定化に寄与しているものと推察される。低スピン状態にあるゲルを加熱すると60度付近でゾル状態に変化し、同時に高スピンへと転移することが紫外可視吸収測定、磁化率測定などから確かめられた。この変化は可逆的に何度も繰り返すことができた。この転移において水素結合が切れることが温度可変赤外吸収測定から明らかになったことから水素結合がこの現象を支配していると予測された。それを裏付けるように少量のアルコールを添加することでもゾルゲル転移およびスピンクロスオーバーを誘起することができた。 この錯体はベンゼンなどの芳香族系の溶媒中ではゲルを形成せず液体状態のままでスピンクロスオーバーを起こすことも分かった。ゾル状態と比較しスピンクロスオーバー温度が20度も低かったことからもゾル状態が低スピンを安定化していることが支持される。さらに興味深いことに高スピン状態から低スピン状態への応答速度を比較すると、ゾルゲル転移とシンクロナイズしているアルカン溶媒中では数分で完結したのに対し、ベンゼン中においては6時間以上を要した。これにより、構造的な相転移とシンクロナイズさせることで素早い応答を実現できることが明らかとなった。
|