Research Abstract |
アミノアシルtRNA合成酵素(aaRS)を改変して,非天然型アミノ酸を特異的に認識させようとする場合に,aaRSの基質結合部位の詳細な構造情報が,改変戦略の鍵となる. 本研究では,大腸菌チロシルtRNA合成酵素の,Y37V,Q195Cという二重変異体が,非天然型アミノ酸のひとつである3-ヨードチロシンを,元の基質であるチロシンよりも効率よく認識する機構を明らかにするために,X線結晶構造解析を行った.その結果,変異体酵素と3-ヨードチロシン,チロシンとの複合体構造を,2.0Å分解能で決定することに成功した.2つの変異によって,基質結合部位のポケットが広げられ,3位のヨウ素原子が,ファンデルワールス半径でぴったりとおさまるようになっていることが明らかとなった.ヨウ素の電気陰性度もまた,3-ヨードチロシンのポケットへの親和性を高める効果があると考えられた.また,2つの残基置換は,単純なポケットの拡張という役割をするばかりでなく,37位はヨウ素原子の結合部位を形成するために,また,195位は,水素結合ネットワークを変化させることによるチロシンの認識の低下を促進していることが明らかとなった.こうした構造情報は,さらなる合成酵素の改変に大いに役立つと期待される. さらに,こうした構造的知見が蓄積されたことで,新たなaaRSである,ピロリジルtRNA合成酵素を改変して,翻訳後修飾でつくられるリジン修飾体を,翻訳段階で部位特異的にタンパク質に導入する研究を行った.現在までに,目的酵素変異体を得るためのスクリーニング手法を確立した.
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