2004 Fiscal Year Annual Research Report
現場培養実験とバイオマーカー分析を用いた底生有孔虫による有機物変質過程の解明
Project/Area Number |
04J11027
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野牧 秀隆 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 底生有孔虫 / 脂質バイオマーカー / 安定同位体トレーサー / 現場培養実験 / 相模湾 / 有機物変質過程 |
Research Abstract |
^<13>Cで標識した藻類を用いた現場培養実験から得られた堆積物、有孔虫、および多細胞生物サンプルの脂質成分組成、およびその^<13>C濃度を分析し、沈降有機物の深海底での変質過程を検討した。天然の有孔虫の脂質組成を有機物摂取様式ごとに比較検討した結果、特にステロール組成において種ごとに特徴的な組成を示した。このことは、底生有孔虫の有機物利用情報が、ステロールなどの脂質組成から解明できる可能性を示す。堆積物サンプルの分析から、深海底に散布された藻類の脂質成分は、6日間でその90%以上が分解されていることがわかった。一方、添加した藻類には含まれない、バクテリア由来の脂肪酸(anteiso-C_<17>)への^<13>Cの取り込みが培養4日目をピークとして見られ、藻類起源の炭素が堆積物中でバクテリアにより同化されていたことが示された。バクテリアによる摂取量は、培養2日目で底生有孔虫による摂取量の1〜3倍となり、短期間での沈降有機物の消費過程においては、底生有孔虫とバクテリアが中心的な役割を果たしていることが示された。また、有孔虫細胞内での主要な脂肪酸(C_<16:0>,C_<18:0>,C_<18:1>)の減少速度は堆積物中の1.2〜20倍となり、底生有孔虫による沈降有機物の摂取が、堆積物中での脂肪酸の分解を促進していることを示唆する。一方、底生有孔虫は摂取した藻類由来の有機炭素を用い、量としては少ないものの(<1%)、stigmasterol、23,24-dimethylcholesta-5,22E-dien-3β-o1の生合成を4日間で行っており、沈降有機物の堆積、摂取後の変質過程の一部が示された。 これらの結果は、第八回国際古海洋会議、および2005年アメリカ陸水&海洋学会において発表した。また、これまでの結果を博士論文としてまとめ、一部を学術誌へ発表した。
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Research Products
(2 results)