2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J11064
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大和 万里子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Raffaelea quercivora / Quercus crispula / 通水阻害 / 接種時期 / 萎凋 / ナラ類 / カシノナガキクイムシ |
Research Abstract |
近年、日本海側を中心とする各地においてナラ類の集団的な枯死が多発している。被害木は夏に葉が急激にしおれ、茶褐色に変色して枯死する。被害木の樹幹にはカシノナガキクイムシが大量に穿孔し、木部に複雑な坑道を形成している。坑道付近には通水の阻害された変色域が見られ、糸状菌Raffaelea quercivoraが高率で分離される。ナラ類萎凋枯死のメカニズムとして、「カシノナガキクイムシの多数の坑道から樹幹辺材にR.quercivoraが拡大し、通道の阻害された感染域が重なり合うことによって、通道機能が全面的に阻害され、樹木は萎凋枯死に至る」が提唱されている。このように、「樹幹の通道をある高さでブロックすること」のみで萎凋に至らせる機構は他の萎凋病に例を見ず、この仮説の真偽についてさらに検討が必要である。本年度では、これまでのミズナラに対するR.quercivora接種試験において、6月〜7月前半に接種すると高い確率で枯死が見られるのに対し、7月後半以降の接種では枯死が見られないことから、接種時期と通水阻害発生との関係を調査した。 7月および8月にミズナラに対しR.qeurcivoraを接種したところ、水平方向の通水阻害域は接種9日目前後に拡大したが、7月・8月接種の間で顕著な差は見られなかった。軸方向の通水阻害域は、接種後の時間経過によって阻害域長に変化は見られず、7月接種におけるほうが、8月接種よりも大きい傾向が見られた。両接種時期とも、接種、対照の両方で、3日目には接種部を中心にチロース芽の形成が見られ、接種で対照よりも軸方向に広範囲に観察された。7月接種では8月接種よりも軸方向に大きく通水阻害域が形成されたことから、軸方向における通水阻害発生の大きさの違いが接種時期による枯死率の違いに関わっている可能性がある。
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Research Products
(2 results)