2005 Fiscal Year Annual Research Report
ES細胞の全能性マスター遺伝子、Oct-4のエピジェネティック制御
Project/Area Number |
04J11105
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
服部 奈緒子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 胚性幹(ES)細胞 / Nanog遺伝子 / Oct-4遺伝子 / エピジェネティックス / 分化多能性 / ヒストン修飾 / DNAメチル化 / ヒストンメチル基転移酵素G9a |
Research Abstract |
平成17年度の研究としては、胚性幹(ES)細胞の分化多能性のエピジェネティックスを明らかにすることを目的とし、昨年に引き続き、ES細胞の分化多能性マスター遺伝子、Oct-4遺伝子とNanog遺伝子のDNAメチル化およびヒストン修飾の解析を行った。昨年までの研究から、これらの遺伝子はともにエピジェネティックな制御を受けていることがわかっている。 今年度は、両遺伝子が発現していない栄養膜幹細胞において、発現抑制に関連するヒストン修飾であるヒストンH3の9番目のリシン残基(K9)および27番目のリシン残基(K27)のメチル化状態を、クロマチン免疫沈降法を用いて解析した。すると、Nanog遺伝子領域のH3K9/K27は高度にメチル化されているが、Oct-4遺伝子領域ではメチル化されていないことがわかった。よって、エピジェネティック機構による遺伝子発現の制御様式は、遺伝子によって異なるという新たな見解を得ることが出来た。 さらに、ES細胞分化誘導系を用いることにより、Nanog遺伝子の制御を行っているエピジェネティック因子を明らかにすることが出来た。通常のES細胞をレチノイン酸で処理すると、分化が誘導され、Nanog遺伝子の発現が低下する。しかし、H3-K9/K27のメチル基転移酵素G9aの欠損ES細胞では、レチノイン酸で処理しても、Nanog遺伝子の発現低下は観察されなかった。このことから、Nanog遺伝子の発現制御にG9aが関与していることが示された。 これらの研究から、エピジェネティック機構は、マスター遺伝子を制御することにより、ES細胞の分化多分化能の維持に関与していることが明らかとなった。この研究は、幹細胞の分子機構をエピジェネティックスの観点から明らかにしたばかりでなく、再生医療研究にも大いに役立つと思われる。
|