2004 Fiscal Year Annual Research Report
地方ガバナンスにおける社会教育行政の構造変革と機能転換に関する研究
Project/Area Number |
04J11238
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 智子 東京大学, 大学院・教育学研究科, 日本学術振興会特別研究員
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Keywords | 社会教育行政 |
Research Abstract |
今後の社会教育行政研究のなかで、新たな制度や政策を構想あるいは設計する際に関わってくる「権利」概念を改めて位置づけなおす作業を試みた。 これまでの社会教育行政研究は、社会教育法制に関する研究が中心であった。そこでは、社会教育法体系における社会教育を、「権利」との関わりのなかで解釈し理解してきたと言える。しかし現代、とりわけ社会教育や生涯学習に関する政策については、地方分権化を強め、国が定める法令による規律を弱める流れにある状況下で、社会教育法制の法解釈を中心とした社会教育行政研究では限界があると考えられる。ただ、地方分権や規制緩和が進んだとしても、地方自治や地方ガバナンスを主眼に据えた社会教育とそれに関わる制度を構想するに当たって、これまで問題とされてきた「権利」概念がどのようなもので、今後はどのように理解していくべきなのかを検討する必要があると思われた。社会教育に関わる「権利」概念は、限定されたより厳密な理解を必要とし、その意味で、「権利」概念をめぐる今後の研究は重要である。これまでの社会教育行政研究の蓄積の中では、「権利」の内実を深める作業の一方で、範囲と限界が明確にされないままであり、そのことが社会教育行政の研究や実務において「権利」概念の有効性を減じさせてきたと考えられる。行政が社会教育活動に何らかの形で関与することが、真に「権利」に関わる義務と理解できるのか、あるいは政治的な選択の問題であるのかを、具体的な状況ごとに見極めていく必要がある点を示唆した。
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