2004 Fiscal Year Annual Research Report
日本近代における民法学の形成と展開に関する歴史的考察
Project/Area Number |
04J11251
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辻村 亮彦 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 梅謙次郎 / 民法学 / 『和解論』 / ローマ法 / フランス注釈学派 / 民事訴訟 / 近代法 |
Research Abstract |
本年度は主として、明治期日本民法学の第一人者である梅謙次郎がフランス留学中に執筆した学位論文である『和解論』を素材に、梅民法学の初期条件について明らかにしようとした。『和解論』のローマ法研究の部分を先行研究と対照しながら検討した結果、ローマ法源という歴史的素材の取扱いにあたって取った梅の姿勢やローマ法の基礎にある社会のありように対する梅の洞察などの諸問題に対する暫定的な見通しを得ることができ、これについて学内の研究会において報告を行った。現在はフランス法研究の部分について、当時のフランスの註釈学派の文献を参照しながら検討することにより、梅民法学が19世紀後半のフランスの法学、政治的・文化的環境からどのような影響を受けて形成されたかをより明らかにするための作業を継続中である。また、これと並行して、梅のフランスでの研究が日本の「近代法」形成においてどのような意義を有していたのかを探るために、旧民法の概説書や明治民法編纂の際の議事録を素材として帰国後の梅の学問的活動の解明に向けて準備作業を行った。 初期梅民法学の内在的理解の前提となる、あるいはそれと強い連関を有する、日本の民事司法の「近代化」の過程についても考察を行った。「和解」が民事実体法と民事手続の交錯領域である以上、近世末から明治期への「民事訴訟」の展開過程を明らかにしない限り、梅『和解論』の理解は困難であろうという見通しにもとづく。そのために第一に、廃藩置県前の政府直轄領での渉外事件の一件書類を検討し、また、民事判決原本に関する研究論文等を集めた書物に対する書評を執筆し(来年度公表予定)、現実的なありようの側面から「民事訴訟」の「近代化」過程を明らかにしようとした。第二に、明治初期から2次大戦期までの民事訴訟法の編纂・改正過程を明らかにした書物に対する書評を執筆・公表し、国家的な規範の側面からのアプローチを試みた。
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Research Products
(1 results)